らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「音楽と音楽家」ロベルト・シューマン









ブログで初めて書いたクラシック音楽の記事
シューマン ピアノ協奏曲とウルトラマンセブン」
https://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/10139121.html





ロベルト・シューマンは、クラシック音楽史に残る大作曲家の一人ですが、
単にそれだけに留まる人物ではありません。

市民革命を経て、ベートーベン以降ヨーロッパはブルジョアジーの力が台頭し、
様々な芸術が花開きました。
クラシック音楽も多分に漏れず、様々な作曲家により様々な作品が創られ、
演奏されるようになりました。
それはクラシック音楽史におけるロマン派の興隆と軌を一にします。

そのようにクラシック音楽が発展していった時代、
それを一時期の流行りに終わらせないため、
より良いクラック音楽とは何かを啓蒙する活動の先頭に立ったのがシューマンで、
自ら、雑誌「音楽新報」において、
曲の批評や演奏会の批評などにつき積極的に筆を振るいました。

今回紹介する本はそのようなシューマンの「音楽新報」における文章を
まとめたものです。

この中で、シューマンシューベルトショパンの作品を批評し、
ショパンやリストが演奏した演奏会を聴いて感想を述べる。
そのなんとも豪華な組合せに想像しただけでもワクワクします。




リストとショパン



シューマンの文章は、啓蒙者としての意気込みからでしょうか、
とても覇気に富んでおり、独特のロマンチックさを漂わせ、かつ明快で、
また鋭い洞察力と先見の明に満ちています。
繊細で柔らかな感性を持ち、同時に頭脳明晰であった
シューマンの人物像が浮かび上がります。

当時、ポーランドの田舎から出てきたばかりのショパン
強力に後押ししたのは他ならぬシューマンでした。


ショパンを発見した時の驚きをこのように表しています。

「諸君、帽子をとりたまえ、天才だ。」

ショパンの作品は、花の陰にひそむ大砲である。」

「世にも高貴で、どんな詩人の歌いぶりよりも熱烈で、
全体といい、細部といい、まことに独創的で、
あらゆる音が一つとして音楽と生命でないものはない。」



ただ、後の偉大な作曲家ワーグナーとは反りが会わず、
感性がシンクロできない部分があったようで、
次のように述べています。

「確かに天才の筆の跡がある。
もし彼に才気と同じくらい旋律があったら、今日を代表する人になっていよう」

ワーグナがフィデリオを指揮した演奏について
「リヒャルト・ヴァグナーのまずい演奏。わけのわからないテンポの取り方」



シューマンはバッハ、モーツァルトベートーヴェンシューベルト
クラシック音楽を確立した特別な作曲家として崇拝しており、
現在、学校でも習うドイツ正統派音楽の系譜は、
このシューマンによって見出だされ、確立されたものといってよいでしょう。


そして最後に、当時全く無名の若者であったブラームスの才能を見出し、
その音楽を絶賛する文章で、彼の筆は終わります。





若き日のブラームス


「今に時代の最高の表現を理想的に述べる使命をもった人が
突如として出現するだろう。
しかも、その人は、段々に大家になっていくような人ではなく、
生まれたときから女神と英雄に見守られて来た人でなくてはならない。

果たして、彼は来た。
生まれた時から、優雅の女神と英雄に見守られてきた若者が。」


このブラームスこそ、クラシック音楽ロマン派の集大成たる音楽を作り出した、
彼の交響曲第1番は、ベートーベン交響曲第10番といわれるほどの大作曲家であり、
ブラームスを見出したシューマンは、
天才は天才を知る、英雄は英雄を知ると言いますか、
強烈に惹き合うものがあったのでしょう。

この文章を書いた2年後、シューマンは不幸にも精神を患い、亡くなります。
あと10年生きていれば、他の素晴らしい才能を見出すことができたであろうに。
残念でなりません。


なお、この本にはシューマンの言葉がいくつも記されています。
それは青少年に良い音楽家になるための戒めを書いたものと捉えられていますが、
それよりも広く、人生そのものをよく生きるために、
心に刻み置くべきメッセージを含んでいるように思います。



「一番大切なことは、耳(聴音)をつくること、
小さいときから、調性や音がわかるよう努力すること。」


「ぽつんぽつんと気のない弾き方をしないように。
いつもいきいきと弾き、曲を中途でやめないこと。」


「やさしい曲を上手に、きれいに、弾くよう努力すること。」


「大きくなったら、流行曲などひかないように。
時間は貴重なものだ。今あるだけの良い曲を一通り知ろうと思っただけでも、
百人分ぐらい生きなくてはならない。」


「隠者のように、一日中とじこもって、機械的な勉強をしていてもだめだ。
反対に活発な、多方面の音楽的な交際を結んだり、
合唱やオーケストラにさかんに出入りしていると、音楽的になってくる。」


「一日の音楽の勉強を終えて疲れを感じたら、
もうそれ以上、無理に弾かないように。
悦びもいきいきとした気持ちなしに弾くくらいなら、
むしろ休んでいる方がいい。」


「およそ派手なばかりで内容のない売物は、時代とともに流れてしまう。
技巧は、より高い目的に奉仕しているときだけ、価値がある。」


「指はただ手段であって、隠れていても一向差支えない。
なるほどきくものは耳であるが、決定するものは、結局心である。」


「芸術は金持ちになるためにあるのではない。
一生懸命にますます偉大な芸術家になりたまえ。
ほかの事は、自然にやってくる。」


「芸術では熱中というものがなかったら、
何一ついいものが生まれたためしがない。」


「人間の心の深奥へ光を送ること 
これが芸術家の使命である。」


「勉強に終わりはない。」