らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「伊良湖の旅」吉江喬松

本日は吉江喬松という、国木田独歩と一緒に仕事し、
後に早稲田大学文学部仏文科を創設した人の紀行文です。

いきなりですが、自分は旅が大好きで日本中を旅して全47都道府県全部旅した。
と言いたいところですが、残念ながら高知県だけはまだ行ったことがありません。

一人旅もあるし、出張の空いた時間に観光したこともあるし、家族旅行もあるし、いろいろですが、
必ず写真を撮って、パンフなど資料を収集し、旅の感想みたいなものを記してきました。
しかし読み返してみて、自分の記憶は喚起されるものの、読み物としてはあまり面白くない。
それに対して「伊良湖の旅」は読んでいて非常に面白い。
どうしてかなと作品を丹念に読んでいき、なんとなくいくつかの理由を見つけました。
まず直接話法を用いることで、その場の臨場感がうまく出ている。
道連れ同士の会話で、読者もその場に一緒にいるような感覚になるし、
道すがらで会う人の土地訛りで、旅先の地方色やら土地の人となりがよく表現できる。

あと、旅先で主人公が見た対象の描写が非常に細かい。
遠くに見える山から、出会った人の服装まで、こと細かに観察しており、
家の中に居ながらにして、その場の情景が鮮明に浮かんできます。
 
作者は国木田独歩と一緒に仕事していたせいもあるのか、
自然の木々や風や海や空の精緻な描写が特に素晴らしい。
なるほどこう書けば、他人が読んでも楽しい紀行文が書けるのかと合点がいった次第で、
今度自分が旅行した時は真似して書いてみようかと考えてます。
当然作者のような精緻な表現は無理ですが、自分なりに細かく見てみようかと思います。