【美術】ゴッホ展5「糸杉」
「糸杉」ゴッホ
名画とは何か。
人によって定義はそれぞれでしょうが、自分的に言えば、
名画であることの説明のいらないもの。
色々調べたり教えてもらったりして、ああ、なるほどと納得するものではなく、
見た瞬間、自分の心の奥にズドンで入ってくるもの 。
そう答えます。
この糸杉については、当時ヨーロッパでは棺桶を作った材料の木であり、
作品から死の気配を感じさせるという解説をする人もいますが 、
自分は全くそんなことを感じませんでした。
どこまでも広がりを持って
どこまでも大きく
そしてどこまでも空に伸びてゆく
躍動感うねるような生命力
生の意欲に満ちた魂の存在感に説明は要りません 。
作品とその空間を共にするだけで、
自分の心も共鳴して幸せな気持ちになります。
自分は芸術作品に最初に触れた時の印象を非常に大切にしています。
近年、美術展では音声ガイドが貸し出しされ、俳優やタレントの方を起用している事とも相まって、人気を博しています。
確かに、その作品の背景やそれにまつわる画家のストーリーなど、作品を見ながらにして聞くことができるというのは便利ですし、なるほどと思う事もあるかと思います。
しかし、この音声ガイドには使い方があると自分は思っています。
やはり自分的には、最初は何も見ないで、まっさらの状態で作品に触れてほしい。
できるだけ既存の固定概念を排して、作品と対話して欲しい。
なぜならば、作品との直の対話で感じられたことは、
世界中のどこにも存在しない、あなたと作品との間でだけ生み出されるものだからです。
それが最初から音声ガイドを聞いてしまうと、そこから流れる既存の情報や感想に頼ってしまって、
音声ガイドの説明に、自分の見た作品の印象をあてはめようとしてしまう。
人間の心というものは弱いところがあって、
初見の、拠りどころの無いものを評価する場合には、既存の知識や意見に当てはめることに終始してしまう。
美術展に行って一番大切なものは、作品に直に触れたあなたが感じたことです。
既存の知識や世間の情報などは家にいても得ることができます。
そして音声ガイドを使う場合は、1周目は自分のインスピレーションで作品を見てみて、2周目にガイドの解説を聞いてみれば良いと思います。
その場合も最初に見た印象を、解説を聞くことで修正することは不要です。
芸術との出会いは、人との出会いに似ています。
あなたはその人の人となりを見極めるために 直に話したり、雰囲気に触れてみることによりその人間を確かめようとするはずです。
その人の履歴書や特定の人間の印象を鵜呑みにして、その人を判断するということはないでしょう。
いい芸術作品との出会いはいい人間との出会いに似ています。
出会えば、一生のつきあいになることがあります。
それは絵画だけでなく、文学や音楽など他の芸術作品でも同じでしょう。
いい作品と出会えますよう。