らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【美術】高畑勲展2 パンダコパンダ&アルプスの少女ハイジ 

 


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パンダコパンダ

 

高畑勲さん初期作品で大好きなアニメ。

ミミ子はおばあちゃんと2人きりで暮らしている女の子。

ある日、おばあちゃんが長崎まで法事に出かけて、ひとりぼっちで留守番していたのですが、

ひょんなことから、パンダの親子と一緒に生活をするようになります。

子パンダのお母さん役として毎日の切り盛りをするミミ子。

それは平凡だけど、とても幸せな毎日でした。

なぜなら一緒にいたいと思う人といつも一緒にいることができたから。

しかしある日突然、動物の園長さんがやって来て、

パンダは動物園にいなければならないと言います。

どんなに頼んでも、その規則は曲げられないと言う園長さん。

女の子と親子のパンダは離ればなれになってしまうのか?

ドキドキしながら見ていると、

次のシーンで パンダの親子は動物園の檻の中に座っています。

そして5時が来て動物園が閉園すると、

おもむろにパンダは立ち上がり、タイムカードを押して、

守衛さんにご苦労さんと声をかけて、電車に乗って家に帰って行きます。

小さな女の子が晩ご飯の支度をして待っている家に。

そう、3人は離れ離れにならないですんだのです。

 

実に上手いオチだと思います。

一本取られた。参りました。という感じ。

胸のすくような大団円。

 


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ご存知ない方のために作品の雰囲気を知ってもらうために。

 


【本編プレビュー】パンダコパンダ│” THE ADVENTURE OF PANDA AND FRIENDS” (1972)

 

水森亜土さんの主題歌も可愛らしくてイカしてます。

 


【公式】パンダコパンダ OP「ミミちゃんとパンダコパンダ」│” THE ADVENTURE OF PANDA AND FRIENDS” (1972)

 

 

 


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アルプスの少女ハイジ

 

高畑勲さんは大人気アニメ「アルプスの少女ハイジ」の演出を手掛けました。

幼い少女ハイジは、偏屈で頑(かたく)なオンジに預けられますが、

天真爛漫なハイジは、次第に頑ななオンジの心を溶かしていきます。

 

頑なな人の心と打ち解け合うには、身構えてはいけない。

相手が身構えているのが分かると、頑なな心はその纏っている心の鎧をより固くして、

更に心を閉ざすことになる。

 

実際にはこれは非常に難しいことです。

下手をすると身構えないで近づいていく人間が、一方的にリスクを背負うことになってしまう。

リスクを背負うことを嫌う今の時代にあっては尚更です。

しかし相手の頑なな心と打ち解け合うには、これしかないとも感じます。

 

その後、ハイジとオンジは半ば騙されるような形で引き離され、

ハイジはフランクフルトにやられてしまいます。

一緒にいたいと思う人と一緒にいられず、引き離される苦しさ、そして辛さ。

パンダコパンダでも同じですが、高畑作品のモチーフには、

一緒にいたいと思う人と一緒にいること。

こういう素朴ともシンプルともいえることに、

人間の最上の幸せがあると謳っているように思います。

 

そして、アルプスの少女ハイジで特筆すべきは、

人間を抱擁するがようなアルプスの偉大な大自然。

 

それが一番顕著に表れているのは、オープニングでしょう。

 


HD アルプスの少女ハイジ OP

 

あるがままの偉大な自然に抱かれるように、人々はそこでヤギを飼い、 チーズを作り、木を切って生活しています。

高畑さんは自然からの恵みを食べることも、自然と調和する人間の所為として 丹念に描き込んだとのことです。

そういえば、巨人の星で、星飛雄馬が、美味しそうなご飯を作って、

かぶりつくシーンなど見たことがありませんね。

勝負に勝つため、身を削って特訓に耐え魔球を編み出す。

それに終始していたように思います。

確かにそれは非日常的、非人間的ともいえます。

 

アルプスの少女ハイジで象徴的なのは、クララが車椅子から立った時のシーンだと感じます。

自然と引き離され、人と引き離され、屋敷に閉じ込められていた病弱な都会の少女が、

人の心と触れ合い、大自然と触れ合うことで、

誰もが不可能だと思っていた、彼女の足が立つようになる。

まさに自然讃歌であり人間賛歌の極み。

 

人間の心と体を健やかにするものは何か。

ここにひとつの答えがあるように思います。

 

なお、美術展に展示され、図録にも掲載されている

オープニングフィルムの原画、絵コンテ、レイアウトは一見の価値ありです。


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