【美術】クリムト展1「ヘレーネ・クリムトの肖像」
先日上野の美術館でクリムト展を見に行ってきました。
ウィーン世紀末という言葉と相まって退廃的と評されることもあるクリムトですが、
自分は、今まで一度も彼の作品を見たことがありませんでしたので、
ぜひ一度と思っておりましたが、今回その機会を得ました。
館内に入り、照明を落とした薄暗い部屋の中から、
パッと花が開いたように明るく浮かび上がった一枚の作品。
「ヘレーネ・クリムトの肖像」
なんというんでしょうか。
少女の可愛いさが、目に、いや、体にダイレクトに飛び込んでくるような感覚。
まるで彼女の息遣いが聞こえてくるよう。
まるきり子どもの可愛らしさという感じではなく、
少女としての可愛らしさと女性としての美しさが交差して混じり合っている感じ。
今まで少女を描いた作品はいくつか見てきましたが、
クリムトの作品の存在感は独特で際立っています。
クリムトと比べると、ルノアールのそれはきれいなお人形という感じ。
これはこれで素敵な作品ではありますけれども。
クリムトの描く少女は、あえて誤解を恐れずに言えば、
その生きている匂いがしてくるというか、
現実の生(せい)の息遣いの美しさを感じるものです。
非常に印象的だったので 、
ショップで絵葉書などを求めようとしましたが、
そこにプリントアウトされているものは自分が絵を見た印象と違っていて、
少女の横顔を書いた平凡な作品に見えてしまう。
本物はもっと画面全体から少女の魅力が強く放たれるものを感じたのですが 。。
絵画芸術というのは観賞する人を念頭において、
そのサイズや描き方が決まるところがあります。
ですから、見るのに近すぎても駄目だし、遠すぎても駄目。
近すぎてその良さがわからないのならば、
ちょっと遠目から見なければならないし、
遠目から分からないのであれば、
近くに寄ってその絵の価値を確かめなければならない。
本物の質感を感じ取れるよう、観る者がそれを探さなければならないのだと感じます。
「17歳のエミーリエ・フレーゲの肖像」
これはこれで美しい清楚なお嬢さんを描いた作品なのですが、
実は今、六本木の美術館で28歳になった彼女を描いたクリムトの作品が展示されています。
「エミーリエ・フレーゲの肖像」
女性として彼女の魅力が開花した印象を強く受けます。
女性としての魅力と問われれば、自分はこちらの作品に手を挙げると思います。
ちなみにこちらが写真の彼女。
いかがですか?
意外と写実的ではありますが、
彼女の一番良い表情をとらえて描いているように感じます。
そこにクリムト独特の服飾の艶やかさを纏わせて作品として完成させている。
クリムトの作品の魅力は、生(せい)の女性の美しさをとらえていることにあると感じます。
それはお人形さん的美しさでなく、
その息遣い、匂いといった、そういう五感を感じさせる
女性の美しさに溢れたもの。
ちなみにクリムト、男性のヌードを描いた作品もありましたが、
どこかぎこちなく、不自然な印象。
そして、なによりも情熱が感じられない笑
「男性裸体像」
今回の美術展で、クリムトは生(せい)の女性美というものを究めた芸術家という印象を強く受けました。
デッサンの展示もいくつかありましたが、本作に劣らず、線がとても美しい。
素晴らしい作品というのは、
0%から完成に近づくにつれて100%になっていくのではなく、
最初の一本の線から100%なのだと感じました。