らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「雪の日」岡本かの子











岡本かの子は、岡本太郎のお母さんに当たる人です。
岡本太郎といえば、大阪万博太陽の塔がその代表作として有名ですね。







岡本かの子自身、歌人および作家として活躍した人で、
近年、大学受験のセンター試験で、その作品が出題されたこともあります。
https://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/12452172.html


さて、この作品、彼女がベルリンに滞在していた頃のお話です。
雪がしんしんと降る冬の或る日、
3人のドイツ人の室内電線修繕工が修理にやって来ます。
かの子は、作業服は貧しいながらも、陽気で明るく、
清潔できちんとした服装の職人達の振る舞いに好感を持ちます。

仕事が終わり、かの子が彼らにタバコを勧めると、
ドイツ人の彼らは、タバコの代わりに、日本の歌を歌ってくれと頼みます。

ドイツ人の彼らに日本語が分かるはずがありませんから、
そのメロディーを聴き入るわけですが、
最初に歌ったカチューシャというロシア民謡
日本語で歌いながらも、やっぱりロシア独特のメロディというのがあるんですね。
このドイツの労働者達は、とても歌が好きで、
色々な曲を普段から愛聴しているのでしょう。
それを即座にロシア風だと言い当てます。

ロック好きな友達に言わせると、アメリカとイギリスのロックは違っていて、
その違いは聞けば分かると言います。
同じように、音楽好きならではの弁といえるでしょう。

ドイツ人の彼らは、かの子に、日本の歌をリクエストします。

そこでかの子が歌ったのは、

どんとどんとどんと波乗り越えて♪

という勇ましげな歌詞のもの。
この歌、ご存知ない方がほとんどだと思いますが、
「出船の歌」という歌で、こちらがメロディとなります。

https://youtu.be/kSlVtkK5kfM

皆さんは、この歌を聞いてどのような印象を持ちましたでしょうか。

ドイツ人達は、これは男の学生の勇ましい歌だと評します。

かの子は、なんでこの曲を選んだのでしょうかね(^_^;)

しかし、これに満足しなかったのか、
彼らは、もっと日本の女性が歌うような歌はないかとリクエストします。

そこでかの子が歌ったのが

「さくら」


さくら さくら 
弥生の空は 見渡す限り
かすみか雲か 匂いぞ出ずる 
いざや いざや 見に行かん

https://www.youtube.com/watch?v=hDh4ml7Jb-I

ドイツ人達はなんと甘美で上品なメロディーだと絶賛してほめそやします。
それを聞いて満足した修理工達は、かの子にお礼を述べて、
外にどんどん降りしきる雪を横目に見ながら、道具をかついで帰っていきます。

最後に、修理工の若い青年が、世界中の切手を集めているので、
日本の切手を1枚下さいと所望します。
かの子は日本から届いた手紙に貼ってあった切手を、何枚もはがして青年に渡します。
かの子の、彼らとふれあった嬉しい気持ちが見て取れるようです。

遠い異国の、雪の降る寒い日に 予想だにしなかった、
ささやかなドイツ人の労働者達との歌のふれあい。
小さくとも、このような温かい心のやりとり。 とても素晴らしいものに思います。

こういう小さな思いの積み重ねが、
人生を彩りを与え、楽しく、豊かにしていくのだと自分は感じます。


ところで、皆さんは、外国人の方に、
日本らしい歌をといわれたら、何を歌いますか?










ヨーロッパに渡航時の岡本かの子とその家族の写真。
後ろの学生服の青年が息子の岡本太郎
太郎さんにもこんな若い時があったんですね(笑)