らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【テレビ番組】映像の世紀 第二次大戦 世界は地獄を見た 後編






最後の記事となります。
開戦当初有利に戦争進めていたドイツや日本も、
連合国側の圧倒的な工業力にジリジリと後退し、後半は劣勢一方となりました。

戦争というのは勝っている時には、とても勇ましく華やかに見えるものですが、
ひとたび負け出すと、とても惨めで、悲壮感絶望感に打ちひしがれるものになります。
そして戦争の大勢が決し、一方的になればなるほど死者の数は増えていきます。
また、それは国民や若い兵士達に絶望的な戦いを強いることになる結果ともなります。




「その日は雪がちらついていて、身を切るような寒さだった
蛇が見える・・・
生け捕りにされて傷ついた者の、長い長い蛇だった。
くねくねと長いやつ 。
地平線に向かって一列に進んでゆく。どれが先頭なのか見分けがつかない。

列の後ろの方に、道に倒れて動けなくなったドイツの陸軍中尉がいた。
中尉は狼のような声で泣き叫ぶんだ
パウロ、待ってくれ。ペーター、見捨てないでくれっ。

仲間は肩を竦めて歩いていく・・・ 。一度も振り返らずにね。」

降伏したドイツ軍捕虜の行列を見たソ連兵の回想より









「空の特攻隊のパイロットは一器械に過ぎぬと一友人が言ったことは確かです。
操縦桿を執る器械、人格もなく感情もなくもちろん理性もなく、
ただ、敵の航空母艦に向かって吸いつく磁石の中の鉄の一分子に
過ぎぬのです。
理性をもって考えたなら実に考えられぬことで、強いて考えれば、
彼らが言う如く「自殺者」とでもいいましょうか。
神の国、日本においてのみ見られることだと思います。

一器械である吾人は何も言う権利はありませんが、
ただ、願わくば
愛する日本を偉大たらしめられんことを国の方々にお願いするのみです。」









「神風も何もかも見ました。
胃がキリキリと痛むような、あんな光景は見たことがありませんでした。
あの人達は死ぬのを覚悟していたんです・・
私だって、入隊した時は命を捧げる覚悟でした。
でも、あんなやり方では…」

アメリ海兵隊員の回想より





「私は自己暗示をかけて、やっと殺人者になれた。
いわば、リモートコントロールだった。
私達がやったことといえば、ボタンを押しただけ。
私は自分が殺した相手は誰一人見ていない。
自分がつけた火は見てもだ。」

アメリ爆撃機搭乗員の回想より










連合軍の進攻と市民の粘り強いレジスタンスにより、
4年間のドイツの支配の末、パリは解放されました。

解放されたパリで市民たちが最初に行ったことは何だったか。
それはドイツ軍将校と交際のあった女性たちに対するリンチでした。
大の男たちが女性を取り囲んで極めて乱暴にバリカンで丸坊主にしてゆく。
女性は涙にくれますが、それを気に止める者はいません。






確かにパリの人々の気持ちはわからないではありません。
しかし、同時に憎悪の報復というものに思わず背筋が寒くなります。


「何ということだ。群集は捕虜達に虐待を加えている。
見境の無くなった群集が怒りをやみくもに行使するのを兵士達も阻止出来ない。
パリは沸々と沸き立ち、発酵しつつ、爆薬を用意している。
些末な憎悪や陰謀、個々の無数の苦悩が蔓延している。」

詩人ジャン・コクトー  占領下日記より






髪を丸刈りにされ、額にハーケンクロイツナチスの象徴)の落書きをされ、
見せしめのため晒し者にされる女性達




こっちは命を落とした者もいるのに、
丸刈りぐらいになんだとおっしゃるかもしれません。
しかし恐ろしいのは、憎しみの連鎖ということなのです。
憎しみが連鎖していけば、その炎はどんどん大きくなり、
やがて相手のみならず、自分自身をも、そして人類全体をも焼き尽くすことになってしまう。

自分は、世を救う聖人とはどんな人かと問われれば、
人々の憎悪の炎を断ち切り、それを正のエネルギーに変えることができる人だと答えるでしょう。

人間というものは、普通に生きていれば、人を殺すことなど及びもつかないものです。
それがひとたび憎悪の炎に焼かれると、
熱病に侵されたように他人を害することを何とも思わなくなってしまう。
憎しみというものは、人の心の奥底にひそむ因子みたいなものですから、
誰しもがそれに陥ってしまう可能性があります。

それだけに憎悪を煽って、他者を利用しようとする者にとっては、
使い勝手のいい道具ともいえます。
ですから、 人間の心の奥底に眠っている憎悪の因子を呼び起こし、
人々を焚きつけようとする国や団体、個人を、絶対に支持してはいけません。
彼らは人々の憎悪を煽って自己の目的を達成しようとしているのです。
その末に達成される目的などロクなものではありません。

人間の憎悪を煽る者達を断固として撥ね付け、決して同調することなく、
また、自らの憎悪の因子とも闘い、その芽を摘んでいかなくてはならない。

戦争のない平和な世界を造るにはどうしたらよいか。という問いに、
いろいろな解答はあると思いますが、自分はこのように答えるものです。




映像の世紀」世界は地獄を見た 後編
https://youtu.be/kKxeISNwinc
https://youtu.be/Fx_zqCRQcj0
https://youtu.be/yTfrCRxYPuA