らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2017】3 間遠くの 野にも逢はなむ






間遠くの
野にも逢はなむ
心なく
里のみ中に
逢へる背なかも


東歌


どこか遠い
野原とかで逢いたかったな
わかってないんだから
あなたってば
よりによって
(知り合いばかりいる)里の真ん真ん中で
逢うことないでしょ




前回、生い茂る雑草を自らの恋心に託して詠んだ歌を紹介しましたが、
万葉集の恋歌には、
現代に詠んだのではないかと思うような感性の歌がいくつもあります。
今回はそのような歌を紹介したわけですが、
いかがでしょうか。
今のアイドルが歌う歌詞に織り込まれていても、
おかしくないフレーズだと思いませんか。

好きな彼と二人っきりで逢いたい乙女心がよく表れています。
その心のみずみずしさ。古くない、新しさにびっくりします。

この歌は東歌(あずまうた)といいまして、
東国の民衆が生活の中で詠んだものなのですが、
作者は詠み人知らず。
つまり、誰が詠んだのか記録が残っていないものです。

名前が分かっていれば、
その後、その人がどうなったのか調べることができますが、
東歌ではそれを窺い知ることはできません。

残っているのは千数百年前、ひとつの歌に織り込めた、
二人っきりで彼に会いたいという思いだけ。
それが、千数百年の時空を超えて、現代の我々の心に飛び込んでくる。
それって本当に不思議で、とても素敵なことだと思います。