らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2011】28 筑波嶺の をてもこのもに

今日はクリスマスですね。
昨日はコミカルなクリスマスの記事をお届けしましたので、
今日はちょっと真面目な、クリスマスにふさわしい内容のものをお届けしようと思います。




今回最も感じ入った歌は



筑波嶺(つくはね)の
をてもこのもに
守部(もりへ)据(す)ゑ
母い守(も)れども
魂(たま)そ合いにける


東歌



筑波山
あちらこちらに
見張りを置くみたいに
お母さんは私を見張っているけれども
二人の魂はもう出合ってしまったの




東歌(あずまうた)は、都人(みやこびと)が詠んだ歌に比べるとやはりどこか流麗さに欠け、
でこぼこした感じがするというか、野暮ったい感が拭えない部分があります。

この歌も最初の五七五の部分が、
「母い守れども」のお母さんの監視が厳しいという例えに全て費やされ、
必ずしも洗練されたという感じではありません。

ところが最後の「魂そ合いにける」を読んだ瞬間、空気が一変するというか、
光がぱあっと広がって包まれるというか、なんとも例えようのない気持ちになりました。


「魂そ合いにける」

二人の魂はもう出合ってしまったの


なんと素晴らしい表現でしょう。

「会」でもなく「逢」でもなく、「合」を使うことで、
二人の魂がぴったりと離れることなく合わさり、
他の誰もそれを引き離すことはできない。
そういった強い思いを感じ取ることができます。

この最後の七文字を言わんがために、
最初の、でこぼこ感じた五七五七の部分は存在していたんだ…
それに気が付いた時、何か心にビビビときました。

洗練された都人(みやこびと)の頭で考えた、気の利いた愛情の表現でなく、
朴訥でも東人(あずまびと)の魂の中から感じて生まれてきた、心の言葉。

本当に素晴らしい歌だと思いました。