らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2017】2 恋草を 力車に





恋草(こいぐさ)を
力車(ちからぐるま)に
七車(ななぐるま)
積みて恋(こ)ふらく
我が心から


広河女王


抜いても抜いても生えてくる
雑草のような
抑えようのない恋心を
荷車に
七台も
積むようなことをしているのは
もとはといえば私から求めたことでした




梅雨、そして、その明けた頃というのは、
湿気がすごくて、
人間にとっては少々不快な時期ではありますが、
植物にとっては、まさに命を繁らす恵みの時季であります。

特に雑草の繁茂は凄いものがあり、
1週間で辺り一面を覆い尽くして、
周りの景色を変えてしまうほどの生命力があります。

そんな、雑草が生い茂って、刈っても刈っても繁ってくる様子を、
自分の、抑えても抑えても大きくなってゆく恋心に例えるというのは、
現代ではもはや思いつかないユニークな感覚だと感じます。

この歌を評して、真面目な歌というよりも戯笑的な作品であるという人がいます。

しかし、自分は意外と大真面目に、
自らの恋を雑草が生い茂る様に託しているのではないかと思います。
雑草が繁茂する時期、人々がせっせと草刈りをするのを見て、
恋の物思いに沈んでいた作者の心が、それとシンクロした。
歌を見る限り、茶化したり、面白いことを言ってやろうという心根は感じられない。
茶化すほどの心の余裕を感じないといいますか。


また、芥川賞作家の川上未映子さんは、
雑草を車7台に積んで引くとか大げさに言ってるけど、
結構それ軽いんじゃないのみたいなところもあって、
歌の作者も面白い人だったのではないでしょうか。
と述べています。

重さときましたか。
でも、自分は、重さは頭に無かったと思う。
やはりボリュームだと思うんですよね。
ほんの僅かな間に、車いっぱいになってしまうほどの雑草のボリューム。
いつの間にこんなに生い茂ってしまったんだろうという驚き。
それを自分の恋心に照らして、自分自身も気づかぬうちに、
いつの間に、想いが、こんなに大きくなってしまったんだと重ね合わせる心。
それだと思うんです。

また、歌とは少し離れますが、
雑草が生い茂るという例えは、
生けるものの生命の旺盛さというものも感じさせます。
刈っても刈っても生い繁ってくる心の生命力。
そこに生命の旺盛さ、生き生きとした瑞々しさというものを感じざるを得ません。

果たして現代人に車7台分も生い茂る、雑草のような
生命力のある恋をする力があるでしょうか。 
しょぼしょぼと生えて途中で自ら立ち枯れてしまう(笑)
そんな生命力の無さを感じてしまうところがあります。

最初に、もはや現代では思いつかないユニークな感覚と言ったのはそこです。

恋心というものは、他人には推し量ることができない部分がありますが、
今の季節の雑草のごとく、千数百年前の人々は、
深く濃くいきいきとした想いで生きていた。
それは間違いないと思います。