らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「枕草子」1 清少納言







日本三大随筆と言いますと、枕草子、方丈記、徒然草というわけですが、
自分はこの中では枕草子を断然贔屓にしています。

徒然草はちょっと説教くさい。
方丈記はどうしても虚無感漂い、元気がない。
それに比べると、枕草子は屈託のない明るさがあります。
そして何よりもその感性が素晴らしい。
文章から瑞々しい感性が溢れ出て、しかも簡潔でリズミカル。
清少納言という人は文学的、音楽的、絵画的な、様々な芸術的才能を併せ持っていたに違いありません。
そして、その感性の素晴らしさとは、観察眼の素晴らしさでもあります。
その観察眼の鋭さは、近現代の洋の東西の芸術家にも、おさおさ劣るものではありません。




第一段





春はあけぼの
やうやう白くなりゆく山ぎは、少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる



夏は夜
月の頃はさらなり。
闇もなほ、蛍のおほく飛びちがひたる
また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。
雨など降るもをかし








秋は夕暮れ
夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の、寝どころへ行くとて、三つ四つ、
二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり
まいて、雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし

日入り果てて、風のおと、虫の音など、はた言ふべきにあらず



冬はつとめて
雪の降りたるは言ふべきにもあらず、
霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、
火など急ぎおこして、炭持てわたるも、いとつきづきし

昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、
火桶の火も、白い灰がちになりてわろし




この第一段に、枕草子の素晴らしさが集約されている観があり、
ことのほか、春夏秋冬の絵画的美しさには目を見張るものがあります。

枕草子、学生の時、勉強したから知ってるよと言われるかもしれませんが、
全319段を読んでみますと、意外に面白いところをいくつも発見します。
知っているはずのところを読んでいるはずなのに、
思わずハッとするところがいくつもある。
そういう意味で、彼女の文章は決して色褪せるものではありません。

というわけで、今月は枕草子を取り上げようと思います。
全5回くらいで、


犬猫編
〇〇なもの編
絵画音楽編
男編
宮中編

などを随時予定しています。


紫式部などは、紫式部日記で清少納言の悪口を書いていますが、
彼女的にはこれは言わない方がよかったかもです。
枕草子を素直に読んでみますと、知識をひけらかすとか鼻にかけるといった、
巷でいわれているような清少納言像は見えてきません。
ただ、ウィットに富んだ、じつと対象を見つめる眼差しが、生きた息遣いをもって感じ取られるだけです。

1000年前の日本に、これほどクールな感性鋭いJapanese womanがいたというのは、
世界に誇るべき本当に素晴らしいことです。



なお、枕草子も、いろいろな出版社から、いろいろな訳者で、本が出ておりますが、
岩波文庫「枕草子」大庭みな子
http://honto.jp/netstore/pd-book_26073439.html
をお勧めします。
原文を生かしたそつのない訳で、
いい意味で、訳者の顔がちらつかない、清少納言の世界に浸れるものとなっております。