らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「枕草子」5 絵画音楽編 清少納言








                          






月のいと明かきに川を渡れば
牛のあゆむままに
水晶などの割れたるやうに水の散りたるこそをかしけれ



月のとても明るい夜、牛車で川を渡ると
車輪が回るにまかせて
まるで水晶が砕けるように水が飛び散るのはとても美しい



一番最初の記事で、
清少納言は、絵画的音楽的感性が素晴らしいという話をしましたが、
この段は、その全てを集約した感があります。

牛車の車輪が回るにまかせて
水が水晶のように飛び散るというのは、
非常に絵画的で美しい描写ですし、
なにか詩の綺麗な一節を読んでいるかのようでもあります。
そして、月の明るいの夜に牛車が水を横切って行く、
夜の静けさに映える、牛車が水を渡る音が、音感的にも趣深いところがあります。



枕草子には、絵画や音楽について、そのものずばり述べた段もあります。


描き劣りするもの


絵に描くと実際よりつまらなく見えるもの。
なでしこ
しょうぶ

物語に美しく描かれている男女の姿かたち











描き優りするもの


描いて実物より映えるもの。
松の木
秋の野
山の里
山の路












清少納言の時代、平安時代の絵画というのは、大和絵と呼ばれる絵画で、
このようなものでした。






この時代、いわゆる絵画のバリエーションというものは、
非常に限られていましたけれども、
絵について述べたこれらの段を読みますと、
今を以て、大きく外れているわけでなく、
いまだに的を得ているのではないかと感じるところがあります。
個人的には秋の紅葉などは実物もかなり美しいものだと思いますけれども。


レオナルド・ダ・ヴィンチが現代に蘇生したとするならば、
現代の科学的な事項を理解するのに、
それほど時間はかからないだろうと言われていますが、
それと同じで、近現代の絵画を清少納言に見せたとしても、
彼女の感性を持ってすれば、
その素晴らしさを受容できるのではないかと感じさせるところがあります。
近現代の様々な画家の作品、ピカソシャガールゴッホなどの絵を見せてどう思うか、
また、その好みを是非とも聞いてみたいですね。




そして音楽について。


音楽は夜。
その顔が見えないくらいの暗さがよい。


まさにこれは、しんと静かな照明を落としたコンサートホールの情景そのものですね。



笛は


笛は横笛が素敵。
遠くから聞こえていたのが、だんだん音が近くなって来るのがよい。
近くに聞こえていたのが、だんだん遠のいて、ほんのわずかに聞こえるのも
なんともいえず素晴らしい。

笙の笛は月の明るい夜に、
車の中で聞こえてくるのが映える。
だけどぎょうぎょうしくて扱いにくそうだ。
そして、それを吹く顔がちょっとブサイクになりがち。


篳篥(ひちりき)はひどく耳障りな、秋の虫でいえば、くつわ虫みたいにうるさいから、
近くでは聞きたくない。
まして下手な人が吹くのは勘弁して欲しい。



清少納言的には、横笛>笙>篳篥という感じのようですが、
では、その好みの順番を覆す演奏をお聞かせいたしましょう(笑)
https://youtu.be/psrbhXeUWzE

そして、笙の演奏も。
確かにぎょうぎょうしくて扱いにくそうです(^_^;)
https://youtu.be/ry-hr05kTFk