らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】ショパンコンクール2015 ファイナル3

  

 

長かったショパンコンクールもついに最終日。
長かった・・という印象は正直なところありますが、と同時に名残惜しさを感ずるのもまた事実です。



Mr. Charles Richard-Hamelin (Canada)





ショパンの協奏曲には2つあるが、
ほとんどが1番を選択し、2番を選択したのは、この人だけ。

実は、自分は2番の方が好きだったりします。
美しく、悲しく、寂しげで、
時には、感情をおもてにあらわにするも、
その思いを内に秘めており、とても滋味深い。

これまで、ずっと1番ばかり聴いてきたので、2番の音楽の全てが新鮮。 
オーケストラも同じ人達が演奏しているのに、
とても新鮮で印象に残る。 

これは、例えていうなら、
ラーメン対決で、ほとんどが醤油とんこつで勝負し、
1人だけ塩ラーメンを選択するという対決に似ている(笑)
醤油とんこつは選択した人の数が多いので、
微妙な味の差が勝敗を分けてしまうが、
塩は同じ比べるものがないので、
味は醤油とんこつのそれと同程度であっても、評価が上回ってしまうことがある(^_^;)

審査員はそんなことないだろうとおっしゃるかもしれないが、
意外と曲順の構成の印象って大きいような気もする。

彼の演奏を聴くと、やはりピアノパートはとても新鮮に聴こえる。
彼のピアノは、音の粒がきれいに揃っており、欠けるところはなく、
きらきら輝くというよりは、まろやかに流れてゆく感じ。
とても心地よい気持ちで聴くことができる。
自分的には普通の名演という印象。

これはどういう意味かというと、聴いている時は、いい演奏だと思いながら聴いているけれども 、
しばらく日にちが経つと、どんな演奏だったか忘れてしまう。
つまり、心に食い込むものがやや浅い演奏。
これまで演奏を終わった中では、協奏曲に限っていえば、真ん中くらいなのだが、
しかし、唯一の塩ラーメンであるし・・どうなるだろうか。

 


Mr. Dmitry Shishkin (Russia)





冒頭のピアノパートを聴いた瞬間、思わずゾクッときた。
音の多彩さが群を抜いており、それぞれの音色がうっとりするような香りを放っている。
うつろう音の翳りが素晴らしい。 

終始、繊細で、いきり立つところはなく、かつ、内に情熱を秘めている。
そして、ほのかにロマンティック。
自分もこういう男になりたい (笑)

小林さんの熱演も、彼の演奏を目の前にすると、
普段は元気なのに、いい男の前で途端にしおらしくなってしまう乙女に見えてしまう。

ロシアというのは、歴史的に素晴らしいピアニストを輩出したお国柄だが、
今年はチャイコフスキーコンクールも重なっており、
ロシア勢はそちらを選択し、ショパンコンクールを回避したとのこと。
彼らが参戦したら、今回の選出はかなり変わったものになっていたのかもしれない。
自分の好みの演奏ということを差し引いても、最も素晴らしい演奏のひとつだと思う。

 
 


Mr. Yike (Tony) Yang (Canada)




カナダ代表の純朴な雰囲気の東洋人の少年。

こんな子がファイナルに出ていたかと驚く。
彼は日本の丸山凪乃さんと同じく、最年少出場の16歳だそうです。 
西洋人の演奏家をずっと見ていたので、ぱっと見た目中学生くらいに見える。

失礼ながら、漫画とかで、ショパンコンクールの会場に迷い込んでしまい、 
ひょんなことで舞台に立ってしまったというストーリーが似合いそうなくらい違和感がある(笑)

しかし、演奏が始まり、ピアノパートが鳴り始めるや、
その堂々たる音にびっくりする。
ひょっとしたら、吹替えではないかと思うほど、彼の姿と音にギャップがある(^_^;)

また凄いティーンがいたものだ。
一つ一つ、彼の奏でる音に唸るしかない。
そして、彼の音の残り香というか、余韻がまた素晴らしい。
それは、自らの内面から溢れ出た自然の発露のようであり、作為を感じない。
あざとさを感じさせない。

しかし、やはり、協奏曲は大曲。オーケストラとの呼吸もある。
先の17歳のエリック・リーと同じく、曲が進むにつれて、やや息切れの感がある。
演奏終了直後の観衆に向かっての挨拶で、彼の顔に笑顔は無かった。
無我夢中で弾き切って、少し放心状態だったのかもしれない。
あるいは、彼自身にとっても不本意な演奏だったのかもしれない。
しかし、自分にとっては、こんな人がいたのかと本当に嬉しく、思わず微笑んでしまった。
10人のファイナリストのうち、誰か1人だけ聴いてみたいと問われれば、
非常に迷うところだが、
このトニーは、是非一度聴いて欲しい1人であることは間違いない。



ファイナル ライブバージョン
https://youtu.be/htVif2h2KIM


Charles Richard-Hamelinさん17:00~
Dmitry Shishkin さん54:00~
Yike (Tony) Yang さん2:07:00~