らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】ショパンコンクール2015 ファイナル2

 

 
 

Mr. Eric Lu (United States)





1日目に演奏した、同じ米国のケイト・リュウと同じように、
彼の音楽は独特の彼自身の音を持っている。
その音には、聴く者にそっと寄り添って語りかける優しさがある。
とても17歳の少年が創り出すものとは思えないおだやかな世界。

しかし、協奏曲のような大曲になると、
彼のその魅力を以てしても、それだけでは一本調子になってしまい、
最後まで押し切ることができない。
様々な魅力を併せもっていなければ、最後まで曲を全うすることはできない。 

彼は懸命に鍵盤を叩き続け、必死に食らいつこうとするが、
少し音楽に置いて行かれてしまう感がある。
初めて見た17歳の少年らしい苦しげな表情。

しかし、彼は自分らしさを崩すことは決してない。
なけなしの自分の持っているもの全てを音楽に出し切って、
最後の最後まで挑んでいる。
ミスタッチや音のよれなど散見されるが気にならない。
最後まで彼の音は優しい。

持てるものを全て出して挑んだ彼の音に、自分は確かに心衝かれるものがあった。


 

Mr. Szymon Nehring (Poland)





地元ポーランド代表の彼。唯一残ったファイナリスト。
ピアノの調べを聴くと、確かに正統派という趣がする。 
ポーランド人の奏でるショパンは、やはり最もショパンらしいのか。
結構昔からの疑問。 
例えば、演歌の節回しなどは、
やはり日本人が一番感覚として分かっているような気がする。
いわゆるポーランド訛りの強いマズルカなどは、そのようなことを言われることがよくある。

今まで個性の強い演奏を聴いてきたので、 
演奏家の彼の存在はスッと透明に通り抜けて、その音は作曲家ショパンしか感じさせない。 
知らない人にショパンの音楽とは?問われたら、とりあえず彼の演奏を勧めるかもしれない。

しかし、音楽とは不思議なもので、
演奏者の個性というものが強く押し出されないと、やはり面白くない。
音楽は復元芸術といわれるが、
作曲家と演奏家の個性と個性がぶつかり合い、重なり合って、より深く豊かな芸術が生まれる。 

作曲家しか感じないというのは、褒め言葉でもあるが、
同時に演奏家の個性に対する物足りなさでもある。 

YouTubeのコメントの中には、彼の演奏が、もっともショパンらしいので優勝に違いない。
というコメントもかなりある。
彼の演奏がもっともショパンらしいというのは自分もそう思う。

しかし、演奏そのものの魅力からすると、
演奏者の個性がより濃く表れているものの方が好みと言わざるを得ない。 
例えば、第3楽章の展開部は、ケイト・リュウの凄みに圧倒的に惹かれる。
そういう意味では、彼の演奏に、ある種の物足りなさをどうしても感じてしまう。


 
 
 
Mr. Georgijs Osokins (Latvia)



 
長めの髪を後ろに流し、襟を立てて胸をはだけたイケメンの彼。
黒系の衣装に、右手に赤いミサンガ?がワンポイントのおしゃれな出で立ち(^_^;)

冒頭のピアノパート。
びっくりするほど力強いタッチ。
ちょっと不思議な感じのショパン
前の演奏者が正統派だっただけに、ひときわ、それは耳に残る。

三次予選の独奏曲の時のyoutubeのコメントを見ると、
彼のショパンはjazzのようだとか、はたまたラフマニノフのようだとかコメントされているが、
彼は自分の感性のおもむくままに、自由に曲を組み立てているようだ。

彼の語りかけには独特の繊細さがある。
第二楽章の徐緩章などは、
例えていうなら、誰もいない水辺に、葉からしずくが垂れて水面に落ちるような音が連なってゆく。
 
youtubeのコメントでは、もっと、きちんとショパンを弾ける人がいるのに、 
どうして彼がファイナルに選ばれたのかというものがあった。
しかし前の演奏者のところでも述べたが、
音楽というのは作曲家と演奏家の感性が重なり合ってより素晴らしいものが生み出されるもの。
その素質の可能性を買われてファイナルに進出したのかも知れない。

ただ、彼の、その個性は、このファイナルの演奏で開き切ったと言えるかどうか。
必ずしもそうとはいえないかもしれない。
しかし、彼の感性は自分的には嫌いじゃない。
一次から三次までの予選の演奏を聴いていなかったので、ぜひ聴いてみようと思う。
他の作曲家の作品などもまた聴いてみたい。




 
ファイナル ライブバージョン

https://www.youtube.com/watch?v=gU3dqh_IUFE
Eric Luさん 18:00~
Szymon Nehring さん 1:03:00~
Georgijs Osokins さん 2:15:00~