らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】ブルーノ・レオナルド・ゲルバー  ピアノリサイタル 後編









若き頃からのベートーベンの友人であり、支援者であったワルトシュタイン伯爵




続きです。
しかし、ゲルバーの真骨頂はこれからでした。
月光を上回る、さらに素晴らしい音楽が、次の曲「ワルトシュタイン」でした。

「ワルトシュタイン」は、ベートーヴェンの友人であり、支援者でもあった人物の名で、
彼にこの曲が献呈されたため、その名が曲名となったものです。

冒頭のタタタタタタタタ♪という印象的なメロディーについて、
今までは知的で抑制的で小洒落たイメージという感じだったのですが、
今回聴いたそれは、先に聴いた月光の第三楽章の激しさをそのまま引き継いだ、
その第4楽章なのではないかと思われるほど 豪華絢爛なピアニズム。

一台のピアノがまるでオーケストラの様に鳴り響き、
聴いている途中、重厚で壮大な交響曲第3番「エロイカ」を聴いているかのような錯覚にとらわれました。
第1楽章が終わって、思わず会場から拍手が鳴り響いてしまったのも無理はありません。

第2楽章、第3楽章でも第1楽章と同じようなことがいえますが、
一つ一つの音の粒が美しく際立っており、素晴らしい。
あれだけたくさんの音が力強く鳴り響いていながら全く音が濁らないのです。


コンサート後半に弾かれたシューマンの謝肉祭も同じく素晴らしかった。
一台のピアノはまるでオーケストラのように鳴り響き、
堂々と真っ正面を見据えながら音楽が鳴り響いていく。
まさにドイツ正統派演奏の極み。

ドイツ正統派演奏とは何かと問われれば、
人間で例えれば、洒脱な人間というよりは、

無骨でゴツゴツとした不器用な人間と言えるかもしれません。
物事を真正面から見据えて力強く黙々と音楽を形造って行く。
ゲルバーのピアノはそれにとても合っていて、
聴いていて、揺るぎない安定感が感じられました。

最後のショパンを聴いて、自分はその感をより一層強くしました。
ショパンの音楽は、ベートーベンやシューマンといったドイツものとは違って、
洒落ているといいますか、独特の陰翳や移ろいといったものが感じ取れる音楽なのですが、
ここでもゲルバーのピアノは、ベートーヴェンピアノソナタのように堂々と鳴り響き、
いわゆる陰りや陰翳のあるショパンチックなショパンではなく、
胸の病など吹き飛ばして堂々と真正面から対峙するベートーベンのようなショパン(笑)


これはゲルバーのショパンを貶しているわけではありません。
こういうショパンを表現することもできるんだというひとつの驚きです。


自分はゲルバーのベートーベンをCDで聴いて20年になります。
今回初めてライブで彼の演奏を聴いたわけですが 、
エロイカのように雄大に鳴り響いたワルトシュタインは、
一生の心の宝物として決して忘れないでしょう。













ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ「ワルトシュタイン」
https://youtu.be/Xc7Yz5Xpk10

ベートーヴェン交響曲第3番「エロイカ
https://youtu.be/VsRUMpNrpS4

シューマン:謝肉祭 op.9
https://youtu.be/JqetMN1ywAg


ゲルバーの ワルトシュタインはYouTube に音源がありますが
綺麗にまとまった感じの従来の自分の印象に近いものです。
今回のワルトシュタインの印象に近かった交響曲第3番エロイカの演奏も一緒に挙げておきます。
今回の演奏会のゲルバーのピアノに一番近いのは、シューマンの謝肉祭の音源かもしれません。