らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【映画】マリー・アントワネット

 

 


 
 
 

公開当時、巨匠コッポラ監督の娘ソフィア・コッポラの作品として注目をあびた作品。
たくさんのものオシャレな靴やファッション、スイーツの数々などが話題になりました。

こちらがその予告編なのですが、
https://www.youtube.com/watch?v=IywBcCwfW8w
ポップな音楽に乗って、とても贅沢で華やかな雰囲気が描かれています。

しかしながら、映画の評判はかんばしくなく、
ヤフーの映画レビューなども散々で、ほとんどが星1つか2つ。

まるでフランス革命時のマリー・アントワネットの世評そのものです。

しかし、自分は数あるマリー・アントワネットを描いたものの中で、
確かに少々品がない感じは否めませんが、この作品は悪くないと感じました。

マリー・アントワネットは、当時の強大国オーストリアから、14歳でフランス王家に嫁入しました。
しかし、その結婚生活は、今までのたくさんの兄弟などの家族に囲まれた、
賑やかで華やかな生活とは全く異なるものでした。
実家のオーストリアから連れてきたペットの持ち込みを拒否され、慣れ親しんできた召使も送り返され、
挙げ句、下着など身につけるものまでフランスのものを強要されるなど、
全て一切をフランス風生活に強制され、
彼女の自由になるものは何一つとてありませんでした。

頼りにするべき夫ルイ16世も自分の趣味に閉じ籠る、気の弱い青年であり、
また彼の身体的理由から、結婚当初、性的能力にも問題があり、
夫婦としてのコミュニケーションは疎遠で、
決して彼女の心を満たすことはできなかったのです。

二人の心が通じ合ってなかったのは、
並んで座った毎回の食事のシーンに象徴されています。
お互いに顔を向き合うこともない、会話もない、
ただ黙々と並んで食べ物を口に運ぶだけの味気ない食事。
それは極めて形式的な儀式のようなもので、心通い合う楽しいものではなく、
彼女は、広い広いベルサイユ宮殿の中で、一人きりだったのです。

オーストリアの王に即位した兄に実情を訴えますが、
嫁ぎ先に従えというばかりで、全く彼女の心を汲み取ろうとはしません。

その結果、彼女は自らの心の隙間を埋めるために、様々な豪華な贅沢に走ります。
それが、いわゆる予告編でちりばめられた、
たくさんの靴やドレスやスイートなどなどや、賭け事や舞踏会などで遊びほうける毎日。

しかし、それらは、彼女の空虚な心を満たし得るに足りるものだったのしょうか。
そうではなかったと自分は感じます。
いわば、それらの物は「刺激」であり、
刺激は一時的に虚ろな気持ちを忘れさせてくれるものであっても、それは恒久的なものではありません。
刺激の恐ろしいところは、その麻薬のような常用的な性質にあります。
刺激でココロを満たそうとすればするほど、
さらに大きな刺激が必要となり、心を一時的にしろ、埋めてゆくには、
どんどんと無意味な刺激が大きくなってゆくことになるのです。

マリー・アントワネットが収集した贅沢品の数々。
映画の中で、ポップな曲に乗って、次々と映し出されてゆきますが、
却ってそのきらびやかさ、華やかさが仇花(あだばな)に感じるといいますか、
見ていてそんな感じがしてしまいます。

もし、これが17世紀であったなら、このまま終わっていったのかもしれませんが、
時代は大きく変わろうとしており、世の中はフランス大革命勃発前夜の騒乱状態でした。
宮殿の外の世界には、まったく無関心であったマリー・アントワネットは、
その現実をいきなり突きつけられます。

しかし、このとき、マリー・アントワネットは、
初めて夫ルイ16世の苦悩というものを知ります。
先代の偉大なルイ15世、そして太陽王ルイ14世に比べ、王として明らかに器量の劣るルイ16世は、
それに悩み、それをいかんともしがたく、自分の殻に閉じ籠るようになっていたのです。
しかし、民衆の蜂起により、震え、怯えながらも、
王として初めて毅然とした態度を示そうとするルイ16世
その時はじめてマリー・アントワネットは夫ルイ16世とともに生きる決意をしたのです。
そして、ベルサイユ宮殿からパリに連れ戻されようというシーンで映画は終わります。

レビューを見ますと、終わり方が中途半端という意見がかなりの数ありますが、
自分的には全く中途半端ではありません。
むしろ、今まで満たされない、自分のことばかり考えていた生き方から、
夫を思い遣り、寄り添い、共に歩んでゆこうと生き方を変えた瞬間。
そこで映画は終わっているのです。
完結していると思います。
後のことはその流れの中のものにしか過ぎない。と自分は思います。


なお、それでも、物足りないという方のために、
マリー・アントワネット最後の様子を少しだけ記します。

映画のラストから数年後、マリー・アントワネットはギロチンで処刑されることになります。
既に夫ルイ16世は処刑されていました。

こちらの絵はマリー・アントワネットが粗末な馬車に乗せられて、
処刑場に向かう姿をある画家がスケッチしたものです。






そして、こちらは死刑判決直後、処刑当日朝に書かれたといわれている直筆の遺書。




こちらの遺書は数奇な運命を経て今に伝えられているものです。
時間が無かったのか、最後の結びの言葉が書かれていません。

こちらの方の翻訳が非常に分かりやすいため、添付させていただきました。
http://fleurpink.exblog.jp/15962930
まさに処刑されようとしているマリー・アントワネットの心情がどのようなものであったのか、
ぜひ御自身の目でぜひ確めていただければと思います。