らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「石を愛でる人」小池昌代


                        
 
今、私立大入試の真っ最中で、受験生の方々もさぞかし大変かと思います。
しかし、春はすぐそこまで来ていますので、どうか最後の最後頑張ってください。

 
さて、今年もチャレンジしました、
先月実施されましたセンター試験国語の小説文の問題。

ここのところ、著作権の切れた古い作家の作品が続いていたのですが、
今年は、現役ばりばりで、現在も執筆活動をされている小池昌代さんの作品が取り上げられました。

この作品は、小説風エッセイとでもいったところでしょうか。
主人公の女性は現代社会の人間関係の煩わしさに嫌気を感じ、
石をコレクションし、それをじっと眺めるという人知れずの楽しみをもっています。
一見寡黙で冷たい無機物である石。それを手にする主人公に、ある種のぬくもりを与えてくれるというのです。
ある意味、決して干渉してこない石の沈黙が、主人公に心地よさを感じさせているといえるのかもしれません。

しかし、彼女は、テレビの仕事関係で知り合った五十代過ぎとおぼしき男性の、
やはり石を愛でる趣味のある人に、
次第に、ほのかな想いらしきものを寄せるようになります。

こういうパターンの話って、
今日では、なにげない単発ドラマなどでも、よく見かけるような気がします。

三十代半ば過ぎの、いわゆる適齢期を少々過ぎた年代の主人公の女性が、
社会の煩わしさのようなものに嫌気を覚え、
それに少し距離を置きたいと鬱々とした日々を送っている。
しかし、それは人嫌いになったというわけではなく、
孤独で寂しく、むしろ人恋しいところもある。
そして、ふとした偶然で知り合ったシンパシー感じる異性との出会い。
でも、その思いは内に秘められ、頭の中を巡るだけで、
なかなか先に進むことができない。
という「大人」の男女のお話。

実は自分は、この手のストーリーは、あまり好みとはいえませんで、 
見ていて、ちょっとイライラしてしまうようなところもあります。
登場人物の優しさというよりは、優柔不断さ、
繊細というよりはひ弱さみたいなものを感じてしまうところがあるんです。


確かにこの作品、石に対する思いと、山形さんに対する思いの移り変わってゆく描写とが
きれいに重なり合っており、
ある意味、とてもスマートに構成されています。

最後、二人で、ぼんやりとした光を頼りに、
細く長い階段を上がっていった先のドアを開いた瞬間、
中からサックスとピアノの音楽が溢れ出してきたという描写は、
これまでの、そして、これからの二人の関係を暗喩しているようであり、
表現的にもなかなか素敵に感じます。

今年、センター試験を受験した高校生の方々は、
ひょっとしたら、自分のお父さんとお母さんくらいの男女の、
このような心模様みたいなものをどう感じたのでしょう。
ちょっと感想を聞いてみたいですね。

ところで、一応、今年も問題を解いてみましたが、
さすがに同年代の好いた腫れたの問題はスムーズに解けました。

でも、20歳くらい年の離れた高校生にはどうだったかな~(^o^;)
もう~、いいオトナなのに、いちいちウザイし、面倒くさすぎるよ~
というところなのかもしれません。
 
 
 
2015年「石を愛でる人」小池昌代