らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】宮澤賢治とクラシック音楽

宮澤賢治は、農学校に勤めるようになって、
同僚の音楽教師と出会い、
その縁でクラシック音楽に触れるようになりました。

賢治25歳くらいの時で、
最愛の妹トシの死の前後であったといわれます。

賢治は、特にベートーベンが大好きで、
ベートーベンの交響曲などのレコードを、
いそいそと町まで買いに行っていたそうです。

新しいレコードを買った時の賢治の興奮の様子を、
弟の清六さんは次のように伝えています。


この大空から
いちめんに降りそそぐ
億千の光の征矢はどうだ

繰り返し繰り返し
我らを訪れる運命の
表現の素晴らしさ

おれも是非共
こういうものを
書かねばならない


宮沢清六「兄とレコード」



賢治は熱心にレコードを聴き、
つい夢中になると、蓄音機のスピーカーに
頭をつっこみながら聴いていたそうです。




ここまでくると、音楽を聴くというより
全身で浴びるという感じですね。
自分もクラシック音楽をかなり聴く方ですが、
これは相当な熱狂的ファンですよ。

その他、賢治が好んだ曲としては、
ベートーベンの交響曲第6番「田園」、
スメタナの我が祖国より「モルダウ」などで、
それを聴きながら、
故郷花巻の田園風景やそこを流れる北上川など
思い浮かべていたと言われています。

賢治は自分自身が聴くだけでは飽きたらず、
レコード鑑賞会を頻繁に開いて、
皆に、自分の愛聴する曲を聴かせたといいます。

そのようにして花巻のレコード店に頻繁に注文が来るので、
レコード会社から表彰を受けたこともあるそうです。

ただ当時のレコードは1枚5分くらいが限度でしたから、
ベートーベン「運命」ですと1曲で10枚くらいとなり、
1曲聴くのも大変なことだったでしょう。

賢治はリスナーだけでは飽きたらず、
自らも独学でチェロを弾くようになります。

ただ、独学ではやはり限界があり、
わざわざ東京まで、チェロを習いに来たこともあったそうです。
その辺りのことについては、
次回掲載予定 宮澤賢治セロ弾きのゴーシュ」の記事で
詳しく述べたいと思います。

ご存知の通り、賢治の作品には、
様々なユニークな擬音が用いられており、
それが物語に独特の雰囲気をもたらしています。
これらは賢治が自然と触れ合いながら、
普段から慣れ親しんでいた
クラシック音楽にもインスピレーションを受けて
感じ取ったものなのかもしれません。


風の又三郎

どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう


雪渡り

四郎もかん子もすっかり釣り込まれて
もう狐と一緒に踊っています。

キック、キック、トントン。
キック、キック、トントン。
キック、キック、キック、キック、トントントン。


「双子の星」

物語中の「星めぐりの歌」の詩には
賢治自身がチェロで曲をつけています。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
http://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/10216631.html


なお、宮澤賢治が聴いたレコードを聴きたいとお思いの方もいらっしゃると思いますが、
実は聴けるんです。
今のリマスター技術(雑音を取り除く技術)は大したもので、
ものによっては、今から100年近く前の音源とは思えぬ演奏もあります。

賢治が蓄音機のラッパに頭をつっこんで聴いたという
ベートーベン「運命」「田園」もあります。
その他、記事で紹介したものをありますので、
興味ある方はぜひ聴いてみてください。

中にはリマスターが今ひとつで、
雑音のひどいものもありますが、
その中から聴こえてくる貧弱な音を聴いていると、
時を超えて、賢治と一緒にレコードを鑑賞している気持ちになれるかもしれません(^^)



ベートーベン「田園」
http://www.youtube.com/watch?v=wRkG-cQJst0