らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】若きベートーベンの音楽

 

ベートーベンというと、交響曲第5番「運命」や第9番「合唱付き」のように、
重厚で、心にずしんと来る曲想のものを、
思い浮かべる人が多いのではないかと思います。
それはベートーベンが耳の重大な疾患にもかかわらず
それに打ち勝ち、人類の至宝となるような曲を作曲したという
エピソードと深く結びついているようにも思います。

確かにそのような曲想の作品は、ベートーベンの真骨頂であり、
素晴らしい作品群であることは自分も認めますが、
それはやはりベートーベンの一部にしか過ぎません。

自分はベートーベンの耳の疾患が重大になる以前の若い頃の曲が結構好きで、
先に挙げた「運命」「合唱付き」などと同様、もしくはそれ以上に愛聴しているものです。

それらの初期の作品群については、なぜか日本ではあまり聴かれず、
多分にモーツァルトハイドンの影響を色濃く受け、
ベートーベンらしさが確立されてない、
というように評されることがあります。
が、自分としては、らしい、らしくないということに、あまりこだわりたくありません。

初期の作品群も、その時々の最高のインスピレーションを受けて作曲されたものであり、
らしくないの一言で片付けてしまうには、
非常に惜しいチャーミングな作品の数々です。

今回はそのようなものから、
いくつか自分のお気に入りの曲を紹介しようと思います。



ヘンデル「ユダ・マカベウス」の「見よ勇者は帰る」の主題による12の変奏曲
http://www.youtube.com/watch?v=bEWMvwX7zLE
 
26歳の時の作品です。
この曲のフレーズを聴いて、ピンと来た方もいらっしゃるのではないでしょうか。
かつてオリンピックなどのスポーツ競技の表彰式で演奏されていた音楽といえば、
思い出される方もいらっしゃるかと思います。

ベートーベンは若い頃、ピアニストとして名を馳せました。
変奏曲とは、主題を変幻自在に変化させ発展させてゆく形式の曲で、
ベートーベンは即興の変奏曲の名手でした。
彼がどのように主題を変化させてゆくかに注目して聴くと、
その表現力の多彩さに驚かされます。
品がよく、かつ若々しく、
若きベートーベンの意気込みが伝わってくるような曲です。
そして、ときおり垣間見える
哀しさ、切なさのようなものが非常に胸に響きます。


ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番
 
28歳の時の曲です。
以前の記事で、自分をクラシック音楽に誘(いざな)ったのは、
ベートーベン ヴァイオリンソナタ第5番「春」だと申しました。
それに劣らず好きなのが、このロマンス2番です。
甘美なヴァイオリンのメロディが印象的で、
かといって甘ったるくなく、
明け方の太陽がゆったりと空に昇ってゆき、
赤々とした太陽の光の色が、次第に空に静かに広がってゆくような、
清澄感漂う美しい雰囲気の曲です。
あくまでこれは自分のイメージですけれども。



ピアノ協奏曲第1番
 
28歳の時の曲です。
この曲には、モーツァルトにもハイドンにもない
みずみずしくチャーミングな愉悦に満ちており、
実は自分的に、ベートーベンのベスト5に入る曲です。
「運命」のように曲に名前はついていませんが、
自分なりにつけるとするならば「おてんば娘」もしくは「じゃじゃ馬娘」。

ぴょんぴょん飛び跳ねるようなリズミカルな快活さと瑞々しさ。
そして次第に大人しく、しっとりとなったと思いきや、
一閃、思いっきりはじけ飛ぶ(笑)

ピアノが弾けるなら、ぜひ第1楽章だけでも弾いてみたい曲なんです(^^;)
特にあの8分過ぎの、一気に鍵盤を滑らせるところ(グリッサンドという奏法だそうです)とか。

実は、究極のピアノ協奏曲第1番を求めて、
いろいろな演奏家のCDを20枚くらい持っています。
それくらい好きで、思い入れのある曲です。
どんなに疲れていても、聴くと思わずクスッとしてしまう
チャーミングな愉しさがあります。
洒脱な第3楽章も捨てがたいのですが、第1楽章だけでも聴いてみてください。


なお、晩年、漫画家手塚治虫
「ルードウィヒ・B」というベートーベンの伝記漫画を書いていました。、
が、しかし残念ながら、その最中に亡くなられてしまいました。
本当に惜しい…ぜひ最後まで読みたかった作品だったのですが、
青年期の、負けず嫌いで向こう気の強い、
自分の才能を自負する、かわいらしいベートーベンが描かれています。

この中には、モーツァルトを訪ねてゆくベートーベンの描写などもあり、
誠に興味深いものです。
そうなんです、モーツァルトとベートーベンという2人の天才は出会ったことがあるんです。
興味ある方はぜひ読んでみてください。




「ルードウィヒ・B」のベートーベン