らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【閑話休題】お寺の魔術

もう子ども達は夏休みですね。

自分の子ども時代の夏休みは、毎年のように、岐阜の父の実家のお寺に遊びに行って、
いとこ達と虫取りをしたり、夏祭りで花火を見たり、夜店でワタアメを買ったりするのがとても楽しみでした。


あれは自分が小学校1年生くらいの時の、夏休みだったでしょうか。

3つ年上の従兄弟と、大通りの交差点で信号待ちをしておりました。
ところがなかなか信号が変わりません。

すると、従兄弟が、
「もぞちゃん、信号が赤になるようにしてやるからな、見てな」
と言うやいなや、信号に向かって、人差し指をぐるぐる回し始め、
何やら妖しげな呪文みたいなものを、ぶつぶつ唱え出しました。

自分は、ぽかんと、その様子を見守っていましたが、
「えーいっ!」と信号に向かって、従兄弟が一喝した瞬間、
な、なんと、信号が黄色から赤に変わったではありませんか。

驚いた自分は「す、すごい!どうやってやったの?!」
と思わず尋ねると、

従兄弟は、すました顔で
「お寺の魔術だよ」
と答えました。

「おてらのまじゅつ??なにそれ?」

従兄弟曰わく、
「お寺の家の人間はね、みんな魔術を持っているんだよ。
でもこれは男だけなんだ。
だから、みほちゃんや、まりちゃん(従姉妹で、当時中学生と小学生高学年)に言っちゃダメだ。
言ったら、もぞちゃん、呪いでミイラになっちゃうかもしれないぞ。」


ミイラになるのはイヤでしたけど、
子供心に、この不思議な体験のことを、言いたくて言いたくて仕方がありません。

そこで、伯父家族や叔母家族やウチの家族など、寺の広間での大勢の夕食の席で、
自分と並んで座っていた父と伯父に、思わずこの体験を話してしまいました。

父は黙ってニヤニヤしているだけでしたが、
住職の伯父は、やおら目をカッと見開いて、ものすごく真面目な顔をして、言いました。
 
「もぞくん、あの魔術のことを知ってしまったからには、
もぞくんも、これからは修行せんといかんぞ。
あの魔術はな、お父さんとお母さんを大切にして、
仏様の教えをきちんと守らないと、いただけない、ありがたい魔法の力なんだぞ」

「じゃあ、しんちゃん(従兄弟)は、修行してるの?」

「ああ、しんちゃんは立派にやっとる。見上げたもんだ。
だから信号変えられたんだ」

その時の自分は、正直、わかったようなわからないようなでしたが、
大人の、しかも寺の僧侶をしている伯父が大真面目に言うものですから、
神妙にうなづきながら、その話を聞いていました。


…それから月日が経ち、
自分も、お寺の魔術を習得し、無難に信号を変えることができるようになりました。
のみならず、その気になれば、電車の踏切さえ開くことができます(^_^;)

それもこれも、まあ人並みに両親ともうまくやって来られて、
そこそこ道を踏み外さず、伯父の言ったことを守ってきたお陰でしょうか。

そういえば、この前生まれたと思った、弟の、末の男の子(甥っ子)も、
日に日に成長して大きくなってきました。

しかるべき時が来たら、彼にも、お寺の魔術をきちんと伝承しなければ。と思いながら、
信号待ちをしている、今日この頃の夏の日でありました。



住職の伯父は、なかなかユニークな人で、今も健在です。
この間、父の見舞いに来てくれたそうです。
ブログでは2回目の登場ですね。
興味ある方はこちらの記事をどうぞ(^^;)