らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「熟少女仮面」第4話 猛虎襲来編 後編

「この作品はフィクションであり、
実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。」



こうして私とよし子さんの共同トレーニングが始まりました。

私、ちょっと勘違いしていました。
ふくよかな人、イコール運動が苦手。

というイメージで思い込んでいたのですが、
よし子さんはまるでゴムマリのよう…
ポンポン軽快に飛び跳ねて、学生時代吹奏楽部だった私はついてゆくのがやっとです。
学生時代一貫してバスケットボール部というのはダテではありません。
反復横飛びなど私の何倍もの速さでリズミカルに飛び跳ねてゆきます。

「よし子さん…ちょ、ちょっと、休ませて」

思わず泣きが入ってしまいました。

「雪乃さん、これは最低でも5セットはやらないとダメですよ」

よし子さんはトレーニングに容赦がありません。
なんでこんな人がダイエットしているのか謎です。


このように、よし子さんに食らいついてトレーニングを続けていた、そんなある日、
出張から帰ってきた、ゆうちゃんと一緒に晩ご飯を食べていました。
2人で見ていたテレビで、連続下着泥の事件のローカルニュースが。

それを見たゆうちゃんが
「おいおい、これ、ウチの近所じゃないか。
雪乃、よく洗濯物干しっぱなしで忘れていることあるじゃない。
あれマズいよ。」

最近、ゆうちゃん、ちょっとうるさいです。
気付いてるなら、洗濯物自分で取り込めばいいじゃないですかね。

犯人の似顔絵も公開されていましたが、
メガネに七三分けのべっとりした髪型。
いかにも変態という感じです。
こんな変態、一刻も早く捕まって欲しいものです。


そんなこんなで、ゆうちゃんはまた出張に出かけ、
いつも通り、よし子さんと郊外の神社でトレーニングをしておりますと、

社の辺りにいつも感じない人の気配がいたします。

おそるおそる2人で社の中をのぞくと
暗闇の中で何か蠢いているものが…

暗闇の中にいたその顔は、例の変態下着泥そっくりではありませんか。

「おい!誰かいるのか!」
変態は私達の気配に気づいたのか、表に向かって歩いてきました。

前回は狂犬のような顔つきの男でしたし、
初めての体験だったので慌てふためいてしまいましたが、
今回は二度目ですし、相手はオタク風の変態ですし、横に心強い弁慶のようなよし子さんもいます。

心にばっちりと余裕がありました。

「あなた!テレビで見た変態ね!
全部見せてもらいました。
今すぐ警察に自首しなさい。
さもなくば、ここで警察に通報しますよ!」

きめゼリフもばっちり決まりました。

「なんだ~お前ら。コスプレごっこか?」

観念すると思いきや、
意外?にも変態は、なめきった顔で近づいてきました。
マズい…
想定外の展開…

しかしその時でした!

よし子さんは今まで見たことのない戦闘モードの怖い顔で、
「オラ!オラ!」と変態を突き飛ばし始めたんです。

よし子さんの突きのパワーに、
体格の劣る変態はひっくり返り、立ち上がっては突き飛ばされ、ひっくり返るの繰り返し。
反撃することのできない見事な連続攻撃。

絵的に見れば、虎が一方的に人間をなぶっているようにすら見えます。

そして、最後のとどめの突きで、変態は一回転にひっくり返り、
ぐったりとのびてしまいました。

このまま警察に通報しようと思いましたが、
よし子さんがコスチュームでしたので、警察に怪しまれても厄介です。
例のごとく公衆電話から通報の上、
警察が到着したのを遠くから見届けました。


…次の日、出張から帰ってきたゆうちゃんと朝ご飯を食べていますと、
新聞を読んでいたゆうちゃんが
「例の連続下着泥、昨日捕まったらしいよ。
なんでも郊外の神社の社で失神してたんだって。
またあの神社?何かあるのかな、あそこ。」

まさか、その何かが私とは言えませんから
「そうねえ、なにかあるのかもねえ…」
とさりげなく調子を合わせておきました。

しかし振り返ってみると、仮面をつけるのも、ウェアを脱ぎ捨てるのも、すっかり忘れていました。
余裕があるようで、まだまだ慌ててたってことです。
好き好んで危険に身を晒してはいけませんが、
避けられない場合には落ち着いて行動しなければ。

まだまだです。
まだまだ修行が足りませんね。



黄虎襲来編おわり