らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2011】21 秋の田の穂田の刈りばか

 
今回最も感じ入った歌は


秋の田の
穂田(ほだ)の刈りばか
か寄りあはば
そこもか人の
我(わ)を言(こと)なさむ



草嬢(くさおとめ)



秋の稲穂田の
刈り取りの割り当てで
あなたと(偶然にでも)近寄ってしまったら
そんなことでも人は
私たちを噂にするでしょうか



今回はとてもかわいらしい名もなき少女の歌です。
恋とまではいえない、異性へのほのかな意識というぐらいの思いでしょうか。

この手の経験、自分もあるような気がします。
皆さんもおそらく経験あるのではないでしょうか。

中学生の時、教科書を忘れると、隣の席の女の子に見せてもらうのですが、
その時お互いの机を寄せ合って並べるんです。
その時の二人の距離間が非常に微妙で、
遠すぎると教科書が見えないし、近すぎると隣の女の子の横顔が気になって仕方がない。
近寄りすぎて目でも合おうものなら、二人とも顔が赤くなってしまったり。

授業が終わると他の女子から「二人ともちょっとくっつきすぎだったんじゃないの~」とひやかされたり。

まさに


教室の
机引き寄せ
か寄りあはば
そこもか人の
我を言なさむ


というところですね。

歌を詠んだ草嬢(くさのおとめ)さんも、
ローティーンの中学生くらいの年頃だったのでしょうか。
こういうほのかな恋のはにかみのような気持ちって、
千年前からずっと受け継がれてきたんですね。

なにか胸がときめくような、とまどうような、そわそわするような、人に隠しておきたいような、
そんな気持ちとてもよくわかります。そしてとても懐かしいです。

しかし、そういう初々しいはにかみの心を持てたのもせいぜい10代の頃までで今はもうすっかりいけません。
初々しいはにかみもどこへやら、ガツガツしてしまって風情も何もありません笑

はにかみは人間だけが持ちうる心ですから、それが無くなったということは、
ある意味、人として退化してしまっているのかもしれませんね。