らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2011】20 北山にたなびく雲の



 
今回最も感じ入った歌は



北山に
たなびく雲の
青雲の
星離れ行き
月を離れて



持統天皇



北山に
たなびく雲
その青い雲は
今まさに星を離れて行き
月を離れて行く



持統天皇は、天武天皇の妻であり、天智天皇の娘でもある女性です。
天智天皇天武天皇は兄弟ではありますが、なかなか複雑な確執があり、
深く調べてみると歴史的にも興味深いところがあります。

選者の若手生物学者の方は、この歌は山崎まさよしさんの歌「Passage」を思い出させて、
自分の研究が行き詰まった時の励みになったというような感想を述べていました。

その歌の歌詞は

「流れてく雲の 途切れた先に
ずっと消えず あの星があるなら
その果てに夢を見続けること
僕はまだ出来るだろうか」

「流れてく雲が 途切れた先に
ずっと消えずあの星はあるから
その果てに夢を描き続けて
僕はまた歩き始める」

というものですが、確かにその歌詞は持統天皇の歌を連想させます、
というよりそれをヒントに作詞した部分があるような気すらします。

まあ選者は持統天皇の歌に感銘を受けたというより、
持統天皇の歌を通して山崎まさよしさんの歌に感銘を受けたという感じですね。


しかし自分は単純にこの歌の色彩感覚と情景が好きなんです。

月の光に照り返って青く浮き上がった雲が、夜の秋風に流れ流れゆく情景。
次々と空が移り変わってゆく大和の秋を感じます。
雲が青く浮き上がるほど月の光がまばゆいのでしょうか。
まばゆく光輝く月や星と青い雲がコントラストになって、
他の季節にない秋の夜の独特の美しさを感じます。

歌に夜空を見上げた時間帯は詠われていませんが、
自分は明け方に近い夜のような気がします。
なぜそう思うかというと、青が最も美しいのは夜明け直前なんです。
画像は最近の朝の散策の情景で、朝5時過ぎ頃の夜明け直前のものです。
赤色や橙色などの暖色系は、朝焼け夕焼けそれぞれの良さがありますが、
澄んだ青色はこの時間帯のものが最も美しいです。

画像のような情景を見ていると持統天皇の歌に心がシンクロする部分があるんです。
持統天皇の眺めていた空はもうちょっと夜深い時間帯でしょうけども。

秋の美しい流れゆく夜空を見ながら、独りもの思いにふける女性天皇
いろいろ想像すると物語が生まれてきそうです。