らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【人物列伝】14 ノア 前編

今回取り上げる人物はノアです。

聖書の創世記に出てくる人物で人類の始祖アダムから数えること10代。
実在したか定かではなくおそらく伝説上の人物。

自分はキリスト教に興味ないからとか架空の人物の人生は…とおっしゃられるかもしれません。

しかし聖書というのは読み方によっては一般人にとってもなかなか面白い読み物なんです。

前提として少し申し上げますと、
自分の母方の叔父はドイツに留学したことのあるプロテスタント系の牧師です。
自分が子供の頃日本に一旦帰ってきて、数ヶ月間家に逗留していたことがあります。
その際聖書の話をいくつか聞かされ、物語の数々に親しむことができました。
その後、教会の牧師の息子と同級生になったりして、
それが縁で日曜教会に通ったりしたことがあります。

その後そういうものとは縁が切れた状態でしたが、
高校大学と様々な書物など読むにつれ、
子供の頃聞いた聖書の話が関連して思い出され、
今回記事にしたようなことを思いついたというわけです。

自分は如何なる宗派に属するものでもありませんし、
キリスト教の勧誘等を伴うものではありませんので、安心してお読みください。

さて本題に戻りますと
聖書の創世記ノアの記述部分は簡素でそっけないものです。

地上に増え始めた人々が悪を行っているのを見た神が、
大洪水で地上の全てをリセットしようとするも、
ノアだけは神に従う人であったので方舟を作るよう命じた。
ノアは方舟を完成させると自分の家族と全ての動物の雄雌を方舟に乗せた。
やがて大洪水が起こり地上に生きていたものを全て飲み込んだ。
洪水が収まって、方舟は地上に無事到着し、そこから新しい世界が始まった。

字面をたどるとおとぎ話そのもの。
神様を信じていて良かった。
めでたしめでたしのハッピーなストーリーになっています。

しかし聖書の話は行間に潜んでいるものや喩えが何を意味するかを想像すると、
なかなか示唆に富んだ話になることがあります。

まずノアが神の啓示を受けたのは500歳。
聖書の創世記の人々はかなり長生きなので、まあかなりの高齢という感覚で捉えればよいかと思います。

神は方舟の作り方について三段式にしろとか部屋を細かく分けろとか船の表面に松脂を塗れとか、結構詳細に指示していますが、
ノアが箱船を作る過程について聖書は何も述べていません。
しかし600歳で箱船が完成していることからおそらく何十年もかかったことになります。

自分なりに考えると、
かなり年をとってから自分の信念(生きがいと置き換えてもいいかもしれませんが)に基づいて行動を開始し、
長い年月をかけてそれを達成したのがノアの人生というわけです。

そして聖書の記述には、ノアは神の啓示を人々に訴えたが、信ずる者は誰もいなかったとあります。
これは自分の信念が誰にも理解されなかったということだと考えています。
「こんなことやっても全くのナンセンスだ」
「年とってからこんなこと始めてできるわけがない」
「やったこともないのだから途中で挫折するに決まってる」
というところでしょう。

洪水後の後日談からしますとノアの息子達も必ずしも聡明な人物ではありませんので、
父のやることに渋々従いながら文句を言っていたのかもしれません。
「父さん、もう年なんだからおとなしく過ごしなよ」
「へんてこな大それたことを始めて世間体が悪いよ」
言うとすればこんなところでしょうか。

ノアが啓示どおり詳細な構造の箱船を作り、動物の雄雌を全て乗せたということは、
自分の信念を妥協することなく当初の計画通り成し遂げたことを意味すると自分は感じています。


長くなりましたので続きはまた次回に。