らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【閑話休題】「ふうすけ」番外編 野良犬退治の巻

あれは二代目ふうすけが来て何年か経ったある夏の日のこと、
自分が高校生、弟が中学生だったと思います。

母が、勝手口に野良犬がいるから追っ払ってくれと言ってきました。
台所の小窓からのぞくといました。
ふうすけくらいの大きさの野良犬が、裏庭の勝手口付近に陣取っています。

弟が「ふうすけも猟犬の端くれ。あいつに追っ払わせよう」と連れ出しました。

ところがふうすけは尻込みしてなかなか前に進もうとはしません。
目も、心なしかキョドっていているような気もします。
「何やってんだ、ふうすけ!行け!」
弟が叱咤すると仕方なく前進しましたが、
その時、野良犬の甲高い一喝「ウウウ、ワン!」

するとその気に圧倒されたふうすけは「キャイ~ン」と泣くような声を出し、
すごすごと自分達の方に戻ってきたのでした。
尻尾が両後ろ足の間に入っていて、尻尾を巻いて逃げるとはまさにこのこと。

それを見た弟が「だらしないなあ。俺が手本を見せてやる」と言うやいなや、
四つん這いになったかと思うと、「ウウウ、ワンワンワンワン」と野良犬に向かって激しく威嚇し始めました。
まるで犬の霊でも取り憑いたかのような迫真の鳴き声に、呆気にとられるやらおかしいやら。

さっきまでしょげ返っていたふうすけも「さすが!さすが!」と言わんばかりに、
隣で喜び勇んで尻尾をちぎれんばかりに振って応援しています。
さきほどまでのうつろな目はどこにいったのやら、きらきら輝いていました(^_^;)

しかし野良犬もさる者。低くうなり声をあげながら、威嚇する弟から決して目を離しません。

5分くらいその状態が続いたでしょうか、
弟が四つん這いから、人間に戻って振り返り
「疲れた。兄ちゃん交代して」と事実上のギブアップ。
野良犬は体格的にも知能的にも何倍もある弟に引き分けたんですから、大したものです。
まあこの場合犬を誉めるべきか、弟のイタさを非難すべきかはいろいろ意見はあるでしょうが、
ここではツッコミません(^_^;)

さて交代を告げられた自分ですが、
弟のように四つん這いで犬の鳴き声で威嚇でも良かったのですが、
速戦即決の方法を採用しました。
庭の枯れ葉をはいていた竹ぼうき2本で、こちらに突破してこないよう注意しながら、
徐々に庭の外に押し出すという戦法です。
これはなかなか功を奏しまして、竹ぼうきは掃く部分が広がっていて柔らかいですから、
噛みつこうにも引っ掻こうにも有効ではありませんので、
野良犬は、為す術なくどんどん庭の外に押し出されていきました。
そしてほどなく庭の外に追い出すことに成功。

野良犬はしばらくこちらを睨んでいましたが、あきらめて、いずこかに立ち去りました。

その野良犬の立ち去り際の後ろ姿に向かって、
ふうすけが勇ましげに「ワン!」と一声。
吉本風に「今日はこれくらいにしといたる!」というところでしょうか。

それを聞いた弟が
「なにがワン!だよ。だらしなかったくせに。明日から鍛え直しだ」
とやりもしない特訓の事を犬に向かって言っていました。

案の定、次の日になってもなにか特別なことをするわけでもなく、
真夏のカンカン照りのお日さまはいつも通り我が家の空を通り過ぎていくのでした。



おしまい