らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「神曲 地獄編」5 ダンテ



長かった地獄も残すはあと第八圏と第九圏のみ。
一気に読もうと思い、勇んで読み始めると、第八圏は欺瞞(ぎまん)の罪を働いた者の地獄で十の種類の壕に分かれていると知り少々心が折れた。
深い…地獄は深すぎる(^_^;)

ちなみに欺瞞の罪の10種類とは女衒(ぜげん)、阿諛追従(あゆついしょう)、聖職売買、魔術魔法、汚職収賄、偽善、窃盗、権謀術策、分裂分派、虚偽偽造をいう。

欺瞞の罪がこれほど細分化されているのは、ダンテが活躍したフィレンツェが当時世界有数の経済の発達した都市で、おそらくダンテ自身様々な不正な行為を見てきたからであろう。それだけにダンテ自身の考えが色濃く出ているところだと思う。

第一の壕は女衒(ぜげん)即ち女性を売り買いするのを業とする者が、悪鬼に肉が裂け骨が砕けるまで鞭打たれる。
女性を騙した者が行く地獄。
この罰ベイシックですけどなにげに厳しい。
ちなみに浮気者、女たらしもここに来ることになりますo(^-^)o

第二の壕は媚びへつらい権力者や金持ちに取り入った者が糞尿の海に永劫漬けられる。
汚物が目鼻口に流れ込み、強烈な臭気で呼吸もままならない惨めな地獄。
なにか罪に対する罰の種類がイメージ通りな感じ。

第三の壕は自らの享楽のため神仏を金儲けの道具に使った者が頭から岩孔に入れられて焔に包まれる(画像参照)。
画像を見ていただくとわかるが、頭から焔の岩孔に入れられ足だけ出ており、ある種のスケキヨ状態(犬神家の一族参照)。

前にも言ったが自分の父方の実家は曹洞宗の寺。少々事情を知った者としては現在の僧侶は大丈夫なのかな、結構な数ここへ来てしまうんじゃないかと思ってしまう。

第四の壕はインチキな占いや邪法による呪術を行い人心を惑わした者が悪鬼に首を反対向きにねじ曲げられる地獄。
「そんなことやってると、あんた地獄へ落ちるわよ。」というところか。
自分自身は占い自体は問題はないと思う。人を力づけ勇気づける占いもあるでしょう。
問題は占いで人の心を必要以上に煽り不安にし多額の金銭を巻き上げる類のものだと思う。

第五の壕は汚職者。職権を悪用して私腹を肥やし社会を腐らせた者が行く地獄。
煮えたぎるタールの海に漬けられ表面に浮かび出ると悪鬼が鉤で突き刺して嘲弄する(画像参照)。

ちょっと特定の世代にしかわからない話をしてしまうが、この悪鬼、北斗の拳という漫画に出てくるザコ悪役のモヒカン達そっくり。
馬鹿で残酷で救いようがなく陽気でひたすらおしゃべりなところが(^_^;)
作者は「神曲」を参考にしたんだろうか…というくらい似ている。

第六の壕は偽善者。偽善をなした者が金メッキの死ぬほど重たい鉛の外套に身を包み、ただひたすら永遠にのろのろ歩く地獄。
この地獄の発想は日本人にはないと思う。
重い服を着てひたすら歩く。苦しいような苦しくないような。
既に述べた地獄の責め苦の方がきついような気もしないでもないが、ダンテの感覚では偽善者の責め苦の方がきついんでしょうね。

第七の壕は盗みを働いた者(窃盗者)が蛇に噛み殺され燃え上がり灰となるが再び元の姿に戻るが休むひまなくまた蛇に襲われるの永劫の繰り返し。

現代の感覚からはなぜ窃盗者が暴力者などよりも深い地獄に…と思われるかもしれない。
しかし古代ギリシアでは強盗より窃盗の方が重罪だった。理由は強盗は奪い返すチャンスを被害者に与えているが、窃盗は窃(ひそか)に盗むことからそのチャンスを被害者に与えていないからということらしい。
今のような犯罪の感覚になったのはたかだか300年といったところ。

さて第八圏3つの壕と第九圏を残すも、次回ついにラスト・インフェルノ(最後の地獄)。
最も深い地獄にはどんなものが蠢(うごめ)いているのか。

お楽しみにです(^_^;)