らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「神曲 地獄編」4 ダンテ



地獄の中の地獄第六圏は異端者の地獄。

あらゆる宗派の異端の教主と門徒が火焔の墓孔に葬られている(画像参照)。
異端を信仰しているというのは精神の根幹たる信仰を誤った者だから一番深い地獄と思いきや、9つのうちの6番目と知って少々意外な感じ。

ちなみにここに落ちる異端者とはキリスト教カトリック)成立以降、すなわち改宗できたのに邪教を信じ続けた人々を言うらしい。
というわけでキリスト教成立以前の歴史上の偉人達、カエサルソクラテスプラトンアリストテレス等々はここではなく第一圏にいる。
キリスト教カトリック)を信仰していなければどんな偉人でも天国には行けない。それがダンテの描くあの世の世界。

第六圏は墓穴が溶鉱炉のようになっており、真ん中辺りの地獄とはいえ非常に厳しい責め苦である。
だいたい聖書でも神による火の制裁を受けるのは最も邪悪な者を葬る時に使われるもので(例えばソドムとゴモラ)、墓が溶鉱炉のようになっていてその中で永劫に身を焼かれ続けるという、当時の欧州の人々の異端に対する不寛容及び憎しみというのは凄まじいものがある。
中世欧州の激しい異端の弾圧の歴史さもありなんという感じがする。

第七圏に向かう途中、深い地獄から吹き出す凄まじい悪臭にダンテは後ずさりせざるを得ない。
いよいよ地獄は深くなっていく。


第七圏は暴力者の地獄。暴力をふるった者が暴力の種類に応じて3つに振り分けられている。

第一の環は他人に対する暴力。
赤い血の池の中で暴君達が血の熱湯責めにされている。
熱さに耐えかね池から出ようとする者は半人半馬のケンタウロスにより矢で射られる(画像参照)。
ケンタウロス曰わく「やつらはほしいままに人の血を流した暴君ども。今ここで自分らのむごい罪業に泣いている。人の血を流させたのでその血で煮られてる。」

第二の環は自己に対する暴力。
自殺者が奇怪な樹木と化し、人頭鳥身の怪鳥アルピアに葉をついばまれる。
葉とは未来の希望の象徴であり、それが全てついばまれるということは未来の可能性を悉く失うということだと思う。

宗教を問わずなぜか自殺者は深い地獄に落とされている。
直接的には他人加害ではないので、それほど深い罪ではないんじゃないかとも思ってしまう。
にもかかわらず暴君と同レベルの地獄に落とされるのは、自殺行為が他人加害同様、自然の摂理に著しく反する行為とされるからだろうか。

ただ仏教の説話に捨身飼虎というものがある。
少なくとも、世の人を救うための手段として自らの命を捧げるのはまた別になるのだろうか。
神曲」はここではそれについて答えていない。

第三の環は神に対する暴力。
主に男色者に火の雨が降りかかる。
聖書のソドムとゴモラの説話の通りそのまま。

それが本当に存在するならテレビに出ているオカマ芸人は全てここで火の雨に逃げまどうことになる。
しかしその場面を空想すると、なぜかたけしのお笑い番組の罰ゲームのような絵しか思い浮かばない、お笑いウルトラクイズとかの。不謹慎ですけど(^_^;)
なおカトリックは現在でも同性愛支持に消極的である。

いよいよ残す地獄も第八圏第九圏の2つのみ。
長くなりましたので次回に続く。