らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「神曲 地獄編」3 ダンテ


第四圏は貪欲者の地獄。
浪費と吝嗇の悪徳を為した者が重い金貨が詰まった大きな袋を転がしながら「なぜ貯める!」「なぜ浪費する!」と互いに罵り合いせめぎ合う。

トルストイ曰わく「金は糞尿と同じだ。溜めれば溜めるほど悪臭を放ち、ばら撒けばばら撒くほど土を肥やし新たな芽を生む。」

自分のためだけに金を貯めこみ浪費する者は、トルストイの言う糞尿を溜め込み悪臭を放つ者として第四圏に落ちる者なのかもしれない。
現在の資本主義社会は経済的価値に重きを置くので、度を過ぎると第四圏に落ちる人間を多く作り出す危険があるのかも。自戒をこめて。

蛇足ながらロシアの文豪トルストイは「多くの女性を愛した人間よりも、たった一人の女性だけを愛した人間のほうがはるかに深く女性というものを知っている。」という超名言も残している(^_^;)


次の第五圏は憤怒者の地獄。

怒りや不満で自己を見失った者が、他人や世の中を呪って、どす黒い血の色をしたステュグスの沼で落ちた者同士お互い永遠に傷つけ合うというもの。

日本でいう血の池地獄のようなものだろうか。
血の池地獄も確か自分1人が抜け出そうとして足を引っ張りあい、結局誰も血の池地獄から抜け出せないという話だと思った。
芥川龍之介蜘蛛の糸」のカンダタもそういう類の人間だった。
確認しようと「血の池地獄」で検索すると別府温泉の「血の池地獄」しか出てこない(^_^;)
確かにあそこはいい温泉だけれども。

そうこうしているうちに船頭プレギュアスが矢のような速さで舟を漕いで現れ、ダンテを対岸のディースの町へ連れて行く(画像参照)。

その途中でフィリッポ・アルジェンティという男が舟に取り付きダンテに声をかけるが、ダンテは一片の同情もなくステュグスの沼に突き落とす。
どうも彼はダンテの個人的知り合いらしい。
ダンテはフィレンツェで白派という派閥に属していたので対立する派閥に属していた人間なのかもしれない。

沼に突き落とすのを見た案内人のヴィルギリウスはダンテの首を腕に抱いて接吻をし、「お前はよく怒った、よく怒ることができた。正しい怒りを持つことができた。」とダンテを誉める。

要は間違った怒りを持った者は第五圏の地獄に落ちるが、正しい怒り(義憤)を持った者は同じ怒りでも全くの別物という事らしい。

しかしこの時のダンテの態度は我を忘れるほどの怒りに満ちている。
日本人的に見るとやり過ぎではないかとも思うほど。

怒りという感情は一旦火がつくと激しく燃え盛るためコントロールが非常に難しい。
正しく怒るというのはよほど自己抑制ができていないとなし得ない。
怒りは人間にとって非常にコントロールし難い厄介な感情だと個人的には思う。


そうこうしているうちに舟はデュースの町に到着する。
そこは堕落した天使と重罪人が収容される永劫の炎が燃えさかる環状の城塞。
ただでさえ地獄の世界なのに、地の底から溢れ出てこないように更に厳重に管理されている地獄の中の地獄。

本当の地獄はこれからだという感じだろうか。

長くなりましたので次回に続くです。