らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「ベースボール」正岡子規


この作品は野球を世に知らしめるための啓蒙書というところです。

正岡子規が野球をしていたってご存知でしたか。
ユニフォームを着た写真も残っており結構似合っています。

明治20年代でしょうからプロ野球が発足するまでまだ50年くらい前の話ですね。
子規の辺りは本当に日本の野球のパイオニアって感じです。
日本で野球を知っている人もほとんどいなかったと思われます。
そのためか人々に野球を知らしめるため野球のルールはもちろん道具にいたるまで事細かに説明しています。

「一尺四方ばかりの荒布にて坐蒲団のごとく拵えたるもの」って何だと思いますか?
正解はベースですね。
ベースも野球を全く知らない人にどんなものか説明するのは結構難しいものです。

子規は野球の要諦は球にあり、球は常に動く故に遊戯の中心も常に動くので防者九人も打者走者もも傍観者も常に球の動きを見ていなくてはいけないと言います。
野球の基本中の基本でよく理解しているなあと感心します。
子規は誰から野球を教わったんでしょうね。

あと面白かったのは「今走者と球との関係を明かにせんに走者はただ一人敵陣の中を通過せんとするがごとき者、球は敵の弾丸のごとき者なり。線上において一たび敵の球に触るれば立どころに討ち死を遂ぐべし」「走者がこの危険の中に身を投じて唯一の塁壁と頼むべきは第一第二第三のベースなり」という戦場に擬した例えですね。
当時としてはこういう例えが一番わかりやすかったかもしれません。

そしてちょっと驚いたのは「投者は打者に向って球を投ずるを常務と為す。その正投(ストレート)の方、外曲(アウトカーブ)、内曲(インカーブ)、墜落(ドロップ)等種々あり。」
と変化球の存在を述べていることで、当時から普通に投げられていたんですね。

最後に「ベースボールいまだかつて訳語あらず、今ここに掲げたる訳語はわれの創意に係る」との事で現在も使われている用語も多数あります。
実はベースボールの訳語たる野球も子規が自分の名前を密かに入れた造語と言われていました。
つまり野球→野ボール→のボール→のぼーる(升は子規の本名)てな具合です。
しかし今ではこの説は否定されているようです。曖昧にしておいた方が面白くて夢があってオチがあって良かったんですけどね。

先日、夏目漱石正岡子規」の記事で現代に子規が蘇ったら喜ぶものは温水付き便座といいましたが、間違いなく野球もそうでしょう。世界大会で2連覇したと聞いたら狂喜乱舞したことでしょう。
その姿是非ちょっと見たかったですね。



うちあぐる
ボールは高く
雲に入りて
又落ち来る
人の手の中に

子規