「雨」 八木重吉
今は梅雨の真っ只中。
やはり雨がよく降ります。
梅雨の雨というのは、ざあざあ強くというよりも、
しとしと静かに降ることの方が多いように感じます。
昼のオフィス街に降る雨
真夜中の住宅街に降る雨
休日まだ街が眠っている朝に降る雨
同じような雨でも、静かにそれに耳を傾けると、
それぞれ雨の音が違うのに気づくことがあります。
皆さんは、雨の詩というと何を思い浮かべるでしょうか。
自分は、雨の詩というと、
八木重吉という詩人の作品を思い出します。
八木重吉は結核のため、30歳にならずして亡くなった人です。
これまでも何度か彼の作品を取り上げてきましたが、
今日は雨に関する詩を紹介いたします。
雨 八木重吉
雨のおとがきこえる
雨がふってゐたのだ
あのおとのようにそっと世のためにはたらいてゐよう
雨があがるようにしづかに死んでゆこう
独特の静謐さの中の透きとおった、か細くも、意志に満ちた言葉。
もっとたくさんの言葉で八木重吉の詩を賛美したいのですが、
言葉が多すぎると、彼の詩が壊れてしまいそうで出来ないのです。
ですから、皆さんも、彼の詩の文字を、
ひとつひとつ確かめるようにしてどうか味わってみてください。