【美術】「書の美、文字の巧」前編 三の丸尚蔵館
自分は、書というものに対して、あまり関心を持たないで過ごしてきました。
書道を習ったことはありませんし、
自分にとって文字というのは、
コミュニケーションを伝達するための記号に過ぎなかったと言ってよいと思います。
しかしながら、書というものを見ると、
作者の思い、意欲といった、芸術を見るに似たものを感じざるを得ない部分があります。
そこで今回縁あって行ってきたのはこちらの催し物。
http://www.kunaicho.go.jp/event/sannomaru/tenrankai74.html
「書の美、文字の巧」宮内庁三の丸尚蔵館
宮内庁秘蔵の宝物の書が惜しげもなく展示されており、しかも無料(@_@;)
催しは前期中期後期と時代別に分かれており、
後期の今回は幕末維新の歴史的人物の書。
そのラインナップを申し上げますと、
徳川斉昭、藤田東湖、島津久光、佐久間象山、吉田松陰、坂本龍馬、高杉晋作、
孝明天皇、静寛院宮(和宮)、大久保利通、岩倉具視、西郷隆盛、伊藤博文、明治天皇、
といった幕末維新の英傑綺羅星のごとく。
彼らの軌跡は歴史書などで周知の事実ですけれども、
どんな人物だったかという人物像においては、
他人の伝聞も多く、また後付けされたものもあるでしょうから、
実際のところはわからないところも多いのではなかろうか。
それを彼らの書から感じられるものにより、探ってみようという思いで見て参りました。
まず有栖川宮熾仁親王の書。
有栖川宮熾仁親王とは、戊辰戦争の東征大総督になられた皇族ですが、
それよりも、和宮内親王の元婚約者といった方が知られているかもしれません。
堂々とした、かつ気品溢れる書に圧倒されました。
かと思えば、時には糸のように細く、時には大胆に、
あたかも舞を舞うかのような、
変幻自在の書に心底字の上手い方だなあ。と。
微笑ましかったのは明治天皇10歳の時の手習いの書。
「睦仁」の署名は子供らしさが微笑ましいですが、
伸びやかで迫力があり、しかもすっきりしている。
お上手ですね(^^)
続いて、維新の英傑に行きますが、
有栖川宮の書を見た直後だと、
必ずしも達筆というわけではなく、拙いとも感じる書ですが、
伊藤博文のそれには、独特のゴツゴツとしたどっしり感があり、
これはこれで質実剛健といいますか、
自分的には嫌いじゃないです。
ややがっかり系で意外だったのは西郷隆盛。
どうしても西郷さんといいますと、
肖像画や上野の銅像のように、堂々とした恰幅の良いものを想像しますが、
意外に豪傑風でなく、こじんまりとしていると言いますか、
伊藤博文のそのスケールを小さくしたような感じ。
思い切りの良い豪傑風というよりも、几帳面に書いてるという印象を受けました。
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徳川斉昭公の書は、戦の旗物差しに記されて、
風にたなびきながら、ズンズンと進んでいくような勢いがあります。
例えて言うなら上杉の毘の旗のような堂々たる感じといいますか。
藤田東湖の書も同じことがいえますが、
字体がちょっと漢字っぽくない不思議な感覚があります。
豪快さと風変わりな知的さとが共存した面白い書に思いました。
豪快といえば、期待していたのが佐久間象山。
吉田松陰の師であり、勝海舟の義理の兄。
幕末の奇才天才といってもよい人物で、物怖じしない豪壮な性格でも知られています。
しかし、意外と書は丸くてかわいらしいというか、小さくまとまっているというか。
それに心なしか、字が斜め気味のような(^_^;)
自分の字にちょっと似ています。親近感があります(笑)
後編は、坂本龍馬、吉田松陰、高杉晋作といった辺りの書について書きます。