【絵画】国立近代美術館所蔵作品展「MOMATコレクション」前編
国立近代美術館では所蔵作品展「MOMATコレクション」も同時開催されており、
安田靫彦展のついでに見てきました。
こちらも、いわゆる日本を代表する有名な作品が数多く展示されており、
皆さんも、あー、見たことのあるというおなじみの作品も必ずあるかと思います。
「南風」和田三造
逞しい肉体を持った海の男たち。
いかだのようなきわめて貧相で頼りない舟の上で、堂々と海風を受けている様は、
野性味溢れる男らしさを感じざるをえません。
いや、最も言ってしまえば、人間の生命力の強さ、逞しさとでもいうべきでしょうか。
安田靫彦作品とは全く異質な作品ですが、間違いなくこれも男の美しさを描いたもの。
非常にくだけた例えをするならば、
安田靫彦の描く男性はフィギュアスケートの羽生結弦選手で、
この作品のそれはラグビーの五郎丸選手というところでしょうか。
野性味溢れるといえばこちらの作品も。
「裸体美人」萬鉄五郎
草むらに半裸で寝そべる、脇毛をはやして鼻の穴を正面に向けた若い女性。
美しい・・とはいえないでも、 野性味あふれる生命力を感じさせます。
ワイルドビューティーというべきでしょうか。
この作品のモデルは、当時新婚だった奥様だったそうですが、
見せた時に怒られなかったんでしょうか(^_^;)
「道路と土手と塀」岸田劉生
岸田劉生といえば、「麗子像」で有名な画家。
実は以前、彼のエッセイをこのブログで紹介したこともあります。
一見何の変哲もない殺風景な景色を描いたもの。
しかしながら、じつと作品を見ていると、
書き込みの細かさや構図の妙など、不思議な存在感があり、
なにか惹き付ける魅力があります。
影だけが写っている電柱らしきもの。
坂の向こうに何かがあると想像させる土くれの道の不思議な存在感。
描いているものの外にあるもの、見ることができないものを想像させる力が、
この作品には確かにあります。
そういう意味では、フェルメールにも似た魅力のある作品だといえるのかもしれません。
「海」古賀春江
この作品が描かれたのは昭和4年。
描かれているものは、
水着姿のハイカラな白人女性と海中都市とスケルトンの潜水艦、飛行船といった最先端モード。
空の色と海の色がすきっと爽やかに感じる反面、
必ずしもしっとりとは肌になじまない微妙な違和感と齟齬感。
時折感じる虚ろな明るさ。
それは一体何なのでしょうか。
この作品が描かれた時代は、関東大震災の復興により、
地下鉄が開通し、デパートができ、女性の間で洋装も広まり、
日本の人々の生活が大きく変化した時代だったそうです。
どんどんと進んで行く科学と社会の進歩に追い付き切れない人間の意識。
微妙な違和感と齟齬感、そして虚ろな明るさの正体は、そんなところなのかもしれません。