らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】同曲異演奏の魅力 ラ・カンパネラ

 
 
前回、初めてクラシック音楽というものに出会って、
またたく間にCD所有4000枚になったという話をしました。

へえー、4000曲もいろいろな曲のCDを集めたんだ。
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
そうではありません。

同じ曲のCDが何枚もあるんです。

同じ曲なら同じ楽譜で、同じ音楽なんだから、
何枚も集めるのは無意味じゃない?と、
指摘されるかもしれません。

しかし、実はそうではありません。

簡単に言えば、
クラシックは、同じ曲であっても、
演奏者の楽譜の読みにより、演奏に個性があるんです。

例えていうならば、非常に大雑把ですが、
同じ文学作品を読んでも、
読書する人の読みの力や個性によって、文章から汲み取るものが異なるように、
演奏者の演奏の力や個性によって、楽譜から汲み取るものが異なる。
という部分があるといいますか。

別な感じで言いますと、
例えば「川の流れのように」を
美空ひばりさんが歌うのと、井上陽水さんや安室奈美恵さん、
山下達郎さん、北島三郎さん、平井堅さんが歌うのとでは、
同じ楽譜によっていても、
曲への思い入れ、楽譜の読み(捉え方)、その人のもつ個性などによって、
それぞれの味わいが出る。

そんな感じで押さえていただければ。と思います。

実は、これがクラシック音楽の一つの大きな醍醐味なんです。

そのことを、題名で「同曲異演奏の魅力」と称したわけですが、
具体的に、それを味わっていただこうと思います。

曲目はリストのピアノ曲「ラ・カンパネラ」です。

カンパネラとはイタリア語で鐘を意味します。
教会の塔の鐘が鳴る音を音楽にしたもの…といえばよいでしょうか。

ここでは、5人の演奏を聴いていただこうと思います。

まずは、日本でこの曲を広く知らしめたフジコヘミング。
彼女の演奏でこの曲を知った方も多いのでは。


フジ子・ヘミング~ラ・カンパネラ(2015)


音の強弱の揺れが激しく、こぶしを大きく回す演歌のような演奏に感じます。
実は彼女の演奏はミスタッチ(弾き間違え)も多く、
鐘の音という曲のわりには、少々重い感じです。
フジコさんは
「間違ったっていいじゃない。機械じゃないんだから」
と、相田みつをさんの色紙みたいなことをおっしゃいます。

音楽学校のテストですと、楽譜から大きく外れていることが多く、
落第点になると言われています。
しかしながら、彼女の音には、心にズシンとくるものが確かにあり、
音楽の不思議さ、奥深さを感じます。

「リストのカンパネラ」というより「フジコのカンパネラ」というべきかもしれません。


次は、神童と言われたキーシン。
 
フジコヘミングに比べると、
軽やかで、すましたカンパネラです。
才気煥発な超絶技巧的演奏で、
軽々と弾きこなしている印象を受けます。

しかし、音が鳴り響きながら、
音楽に静けさを感じさせる瞬間があるのは、さすがです。
これは他の演奏家の演奏では感じられないものです。
若いクラシックファンは、この演奏をベストにする人も多いと思います。


3番目は、中国のキムタクと言われるショパンコンクールの覇者ユンディ・リー。
http://www.youtube.com/watch?v=hEnfZjqMSy0&feature=fvwrel
キーシンよりウェットな感じで、華麗に弾きこなしています。
良い意味でも悪い意味でも、派手な演奏に感じます。


4番目は盲目のピアニスト、クライバーンコンクールの覇者辻井伸行さん。
5人の中でキャリアは一番格下といえるでしょう。
しかし、音が非常に落ち着いていて、丁寧で、きれいです。
静けさの中に、音に歌を感じます。
繰り返し聴いても飽きない不思議な力が彼の音の中にはあります。
今一番お気に入りの演奏です。


最後は往年の巨匠ルービンシュタイン。


堂々とした、まさに巨匠にふさわしい演奏に感じます。
演奏に余裕すら感じますが、
軽薄な部分は微塵も感じません。
コクのある華やいだ、色気すら感じる演奏です。
色で例えればピンクや紫という感じ。
自分の好みの演奏というわけではありませんが、
さすがです。
落ち着いて聴いていられます。


以上、同じ曲でも演奏者によって、
かなり違うのをお感じいただけたでしょうか。

こんな感じで、自分の理想の演奏を探求してゆくと、
同じ曲のCDを何十枚と集める結果になってしまうのです。

なお、感想はあくまで、自分自身の主観的なものに過ぎません。
聴いた方、それぞれの感じ方があって然るべきだと思います。
それをワイワイ言い合うのも、クラシック音楽の大きな醍醐味なんです。
よろしかったら一番気に入った演奏など教えていただけたらと思います(^^)

なお、最後にお願いですが、
YouTubeの画像を見ながら聴いた方は、
ぜひ一度画像を見ないで聴いてみてください。
目からの情報を遮断している分、
最初と違ったものを感じることもあると思います。