らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「猫吉親方またの名は長ぐつをはいた猫」 シャルルペロー 楠山正雄訳











今回のテーマは「猫」。
猫が出てくる作品といえば、子供の時分一番最初に知ったのが、この「長ぐつをはいた猫」。

戦前の邦題で「猫吉親方」と訳されており、ちょっとヘンテコな感じもします。
しかし、この物語の、頼りがいのある猫の行動から、訳者は「親方」とつけたのでしょう。


物語は遺産相続で末っ子が、猫を相続したことから始まります。
この末っ子、猫の目の前で、見も蓋もない、とても残酷なことをつぶやきます(^_^;)

「ぼくは、この猫をたべてしまって、それからその毛皮で手袋をこしらえると、
あとにはもう何にも、残りゃしない。」


猫の毛皮って、中世のヨーロッパでは結構あったんですよ。
こちらの絵をご覧ください。








行商の男がリュックに引っ掛けている猫の毛皮わかりますか。



ちなみに、こちらの猫も毛皮の素質充分といえます(笑)








ところがこの末っ子に相続された猫、只の猫ではありませんでした。
一休さんか、はたまた木下藤吉郎かと思わせるような機知と才覚で、
ぼけっとした末っ子のご主人を、
あれをあれよという間に高貴なカラバ侯爵に仕立て、
王様のお姫様の婿になるように画策します。

猫の特筆すべき戦略は、その情報収集の巧みさです。
カラバ侯爵からの贈り物と称して、
捕らえたウサギやキジを持って頻繁に城内に立ち入り、
王様と姫の行動を把握し、
それに常に先回りをして、カラバ侯爵を強く印象づけます。

圧巻は、最後の猫の人喰い鬼退治。
鬼の自尊心をくすぐるだけくすぐって、
小さいものに化けられるかと言って、ネズミに化けさせた瞬間、
それを頭からガブリと問答無用に瞬殺(@_@;)

その結果、見事、末っ子は姫と結婚し、
王様の婿におさまったのでした。
そして、猫も大貴族の位を与えられ、悠々自適に暮らした
ということですが、
ペローは、一体この話で何が言いたかったのでしょうか。


物語の最後にペローは言います。

「親ゆずりの財産に、ぬくぬくあたたまっているよりも、
若い者は、自分の智恵と腕を元手にするにかぎります。 」


自分の智恵って・・全部猫の智恵じゃん(笑)
それにお兄さん達は、風車で粉まみれになったり、ロバと農耕で汗みどろに働いていたでしょうに、
全部猫に任せっきりで、何もしないで一番ぬくぬくあたたまっていたのは、末っ子なのでは(^_^;)
と、思わずツッコミを入れたくもなりますが、
猫の機知に富んだ行動がとても楽しく、愉快な話ですから、
まあ許しましょう。

しかし、猫に全部お膳立てしてもらって王様の婿におさまった末っ子、
猫から離れたところで、姫や王様と上手くやっていけるんでしょうか(@_@;)






「猫吉親方またの名を長ぐつをはいた猫」 シャルルペロー 楠山正雄訳
http://www.aozora.gr.jp/cards/001134/files/43118_21538.html