【クラシック音楽】ラ・フォル・ジュルネ2019 中世・ルネサンスのアカペラ声楽曲
このコンサートの会場はいわゆるコンサートホールではなく、
通常は国際フォーラムで開かれる会議などのために用いられる空間でした。
ですから、いわゆる舞台袖というものがなく、
演奏者はいったいどこから現れのだろうかと思いきや、
彼らは客席の後ろの扉からグレゴリオ聖歌を歌いながら登場。
この趣向はサプライズでした。
続いて、マショー(1300頃-1377)のノートルダムのミサ曲。
このコンサートは 15世紀から16世紀の中世ルネサンス期のヨーロッパの
アカペラの声楽曲を扱ったもので、
日本で言えば室町時代くらいのものでしょうか。
日本のクラシックのファンというのは、
モーツァルト、ベートーヴェンあたりから時代を下っていくのが通常なのですが、
自分はそこから時代を遡って、バロック、ルネサンス音楽のファンです。
シンプルな旋律に心が共鳴するといいますか、
その音楽は現代のものとは違って、
この時代の曲というのは、活版印刷発明前で、聖書が広く流布される前ですから、
キリスト教の信仰は聖像や教会のステンドグラス、音楽といったもので表され、
教化されました。
今回コンサートで聴いた音楽を一言でいうと、ステンドグラスからの光という感じでしょうか。
ステンドグラスから、色彩豊かな光がゆっくりと薄暗い教会の中に降り注いできて、
中にいる者を包み込む。
人々は安心してその多彩なステンドグラスの光に身を委ねることができる。
音楽的にはこの時代の楽譜を見れば分かるように、非常にシンプルなのですが、
決して単色のイメージではなく、
非常に多彩な光の色を感じることができます。
マショーのノートルダムミサ曲、ぜひお聴きになってみてください。
人の声の重なりの美しさを感じ取れる曲です。
https://youtu.be/zTjIpRvUm7w
現代はいわゆる刺激の時代で、テレビコマーシャルなどを見れば分かるように、
短い時間でいかに人々にインパクトを植え付けるかということに終始して、
飽きられたら次から次へと内容を差し替え、
いかに人々に刺激を与え続けるかということに終始しています。
頻繁な刺激の切り替わりの世の中で人々は知らずのうちに疲れています。
癒しという言葉で、これら音楽を語るのは好きじゃないですが、
その音楽はゆっくりと呼吸をして、自らの鼓動を打っていく。
静寂とは自然界にも存在しますが、静謐とは人間が創り出すものです。
この演奏には確かに静謐がありました。
日本のコンサートって、オーケストラものがメインで、
こういう中世ルネサンスのアカペラの声楽ってなかなか無いんです。
しかし この会場に来ていた観客の方々は、800席ぐらいの会場でチケット完売だったのですが、
会場の皆さん、息をしているのか分からないぐらいの静けさ。
蚊が一匹飛んでいても、水滴がポタリと落ちても、
その音が会場に響いてしまうほどの静かさで、
目を閉じれば、まるで無人の教会で音楽が流れているような感すらありました。
最後にコンサートのもう1曲、バンショワ(1400頃-1466)「愛の神への感謝」