らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【美術】新・北斎展2 若き日の北斎













葛飾北斎は1760年に江戸で生まれました。
若い頃の足跡は必ずしも明らかではなく、
資料をたどると、10代で役者絵を得意とする勝川派に入門し、
20歳を過ぎて仕事を任されるようになったようです。






北斎のデビュー作「四代目岩井半四郎 かしく」。



北斎は90歳で亡くなるまで、実に70年以上絵を描き続けていたわけです。
今回の美術展だけでも、その作品は四百数十点。
まさに常に絵と共にあった人生といえるでしょうね。









こちら極めて初期の作品ですが 、
後年の才能を感じさせる片鱗を感じます。
すごくいいですね。
特に風景画にそれが顕著に感じられ、
作品が色々と並べられていても、その作品にパッと目が吸い寄せられます。



こちらはルネサンス期のヴェロッキオ「キリストの洗礼」という作品ですが、
彼に弟子入りしていた20代前半のレオナルド・ダ・ヴィンチが、
その一部を描いています。





ダ・ヴィンチがどこを描いたかわかりますか。

ちょっと背を向けている天使がそれだと言われています。
北斎ダ・ヴィンチと同じように、若い頃から才能の片鱗というものを見せていたようです。





こちら30代になって描かれた「鍾馗図」





作品を貫く太い縦の線が、鍾馗の剣が悪鬼の喉を貫く力強さを表しており、
非常に迫力あるものとなっています。
それはただの迫力でなく、魔を圧すると言いましょうか、
そんなオーラみたいなものが漂っているのを感じます。




そして、北斎は35歳頃勝川派を離れ、琳派に入門。
今でいう出版社のようなものであった版元の注文で作品を描いていた勝川派の頃とは違い、
顧客から直接依頼を受けて絵を描くというスタイルで仕事をしていたそうです。






「風流なくてななくせ 遠眼鏡」






「風流なくてななくせ ほおづき」


そこで描かれた歌麿ばりの美人画
実物で見てすごく良かったです。

特に遠眼鏡の作品。
傘の斜めのラインと遠眼鏡の直線が、
美人二人の曲線と絶妙に調和して目を惹きつけられます。








そしてこちら 掛け軸に梅の木というのは定番な感じですが、
北斎の梅の枝ぶりはとても良い 。
見ていて惚れ惚れします。
絵全体のバランスがすばらしいんです。



そして今回最後に紹介する「夜鷹図」






これはとても雰囲気のある作品です。
美人画の佳作と言われているそうですが、見返り美人ならぬ後ろ姿。
それゆえ顔の表情はわかりません。
彼女は何を思っているのだろうという想像の広がりが、
絵から自ずから感じられ、広がってゆきます。

変なこと言うようですが、
そういう意味では、フェルメールによく似ているんです。
フェルメールの絵画は、物の配置や何気ない表情や角度などにより、
見る者を絵に引き込む効果があると言われています。




意識か無意識かわかりませんが、北斎のこの作品にもそれを感じるんです。