らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【閑話休題】淋しさや孤独について 森田童子さんを偲ぶ





先日森田童子さんが65歳で亡くなったというニュースを目にして、
ちょっと、思わずそのニュースに見入ってしまいました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180612-00236285-nksports-ent

1970年代に活動した森田童子さん、自分はオンタイムで彼女の活動を見た世代ではなく、
1990年代に放送されたドラマ「高校教師」の主題歌で、
森田童子さんの「ぼくたちの失敗」が使われ、それで、彼女を知った世代です。

森田さんの世界観は、当時の賑やかな世相とは真逆のもので、
それだけにハッと耳を傾け、思わず聴き入ってしまうものがありました。


ぼくたちの失敗



春のこもれ陽の中で 君の優しさに
埋もれていたぼくは 弱虫だったんだヨネ

君と話し疲れて いつか黙りこんだ
ストーブ代わりの電熱器 赤く燃えていた

地下のジャズ喫茶 変わらない僕たちがいた
悪い夢のように 時が撫でてゆく




少年のような無垢な、汚れの無い声
その声から紡がれる淋しさと死への憧憬
部屋の中でじっと膝をかかえながら
自分の心の内を静かに見つめている。
触れようとすると、たちまち壊れてしまいそうな繊細さ
孤独の中で時折思い出す昔の友達の記憶
ゆらゆらとした、時とともに薄れゆく記憶の中にいる友達の残像に語りかける。

歌の中の彼はひとりぼっちで、いや、ひとりぼっちというよりは
ぽつんとひとり取り残されて立ちつくしている。

世の中のものは、無関心に自分を通り過ぎていって
手をさしのべることも、振り返ることもない。
そんなどうしようもない淋しさに抗うこともせず
静かに流れる水の流れのような時の流れに身を委ね
誰からも看取られることもなく、
静かにゆっくり眠るように沈んでいく。
それがその淋しい人間の弱さでもあり、優しさでもある。


森田童子さんの歌には、そのようなものが根底にいつも流れているような気がします。
人間は弱くて孤独な存在で、どんな強がってる人でも、
心の奥底にはそのような淋しさが潜んでいるものです。
その心の奥底をじっと見つめ、歌に紡いだ森田童子さんの作品は、
淋しさの本質を突いているだけに、
彼女の歌を聴きすぎると当てられてしまうところがあります。

しかし、森田さん自身の世界は、誰も真似することができない、
すきとおった純粋さのような、そんなものを感じます。

65歳で亡くなるなんてまだお若いのに・・
いや、彼女的には、ちょうど良い頃合いで、
この世を去ったといえるのかもしれません。






たとえば ぼくが死んだら
そっと忘れてほしい
淋しい時は
ぼくの好きな
菜の花畑で泣いてくれ

たとえば 眠れぬ夜は
暗い海辺の窓から
ぼくの名前を
風にのせて
そっと呼んでくれ




たとえば僕が死んだら
https://youtu.be/HjwiEFmwyis







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