らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】レオナルド×ミケランジェロ展 2











レオナルド・ダ・ビンチ 老人の顔のデッサン







顔の部位の比率が計算されて書き込まれており、
レオナルドがいわゆる理系的な幾何学的美しさというものを
追求していたと思わせるものです。


レオナルドのこのようなメモが1万ページ余にわたって残されているそうです。

いくつものスケッチに詳細なメモ。














自己の感性を思うがままにキャンバスにたたきつけているのではなく、
極めて学究的とすら言えます。
しかし彼の絵は数理的に整っているということを感じても、
そこから機械のような冷たさを感じさせるものではありません。
そこには独特の柔らかな優しさがあります。

中世という時代は、客観的考察ということから離れた、いわゆる内省の時代でした。
それで人間の想像力が大きく羽ばたいたかというと、そうではありません。
迷信や偏見、どちらかと言うと負の部分も大きかったようにも思います。

他に魂の拠り所のない人々は、ローマ教会の権威にすがり、
芸術のテーマは、イエス・キリストやマリアを題材とした定型的なもの、
せいぜいギリシャ神話に限られたものでした。
構図や色彩なども極めて定型的であり、今から見るとバリエーションがなく、
描き手による個性が乏しいため、現代の我々からは芸術的には単調でつまらないものにも感じます。
しかし当時の価値観は教会の権威を至上とするものであり、
教会の価値観が最も真であり、善であり、美とされたのです。

しかし、人間というのは、いつまでもひとつの権威の価値観が支配する、
閉鎖的な空間に閉じこもっているものではありませんでした。

人間性の解放というルネサンスの始まり。
そのルネサンス美術において、先駆けを為したのが、
レオナルド・ダ・ビンチやミケランジェロだったわけです。

彼らは美術的作品を制作するのに、
数々の実写的なスケッチや、挙句、人間の解剖などまでして、
実際の人間の構造や筋肉の動きなどを探求しましたが、
そういうものから離れた主観的な人間のイマジネーションというものは、
実にひ弱で、偏見的であり、
客観的な事実に裏打ちされたイマジネーションこそ、
人間の力強さ、豊かさを表現できるものであると考えていたように思います。

今回の美術展の力強い数々のデッサンから、
彼らにとって、素描とは単なる下絵ではなく、
その対象の実体を写しとるための根源的なものであると自分は感じました。


なお、おまけですが、レオナルド・ダ・ビンチの鏡文字。




全てが逆向きで鏡に映して、はじめて本来の文字に見えるもの。
子供の頃からその話は聞いていたのですが、その実物を初めて見ることができました。
おおっ、これがそうなのか。と感動でした。



そして、ついでのおまけでミケランジェロの文字。






すごいきれいで几帳面。そして整っていて美しい。
これだけでも額に飾って鑑賞しうる作品といってもいいような、そんな気がします。