「十二支考 猴に関する伝説」南方熊楠
今年の干支は申(さる)ということですが、
果たして自分は猿についてどれだけの事を知っているのでしょうか。
実は猿について様々な事項を書き込んだ作品があります。
「十二支考 猴(さる)に関する伝説」
作者の名は、南方熊楠。
南方熊楠(みなかたくまぐす)
(1867―1941)
生物学者、民俗学者。和歌山県に生まれる。
博覧強記の人。大学予備門(東京大学教養課程の前身)を中途退学して21歳で渡米,
一時ミシガン州立ランシング農学校に在籍したが,
後にサーカスの事務員となって中南米,西インド諸島を巡遊し,
その間も各種の標本や菌類の採集に努めた。
その後、英国に渡り、ほとんど独学で動植物学を研究。
大英博物館で考古学、人類学、宗教学を自学しながら、
科学雑誌ネイチャーに論文が掲載され絶賛されるなど、その名を知られるようになる。
語学にきわめて堪能で、英語・仏語・独語はもとより、サンスクリットにまで及ぶ19の言語を操ったといわれる。
彼の人物像については、その破天荒さゆえ、とても書き切れませんので、
よかったら、こちらをご参照ください。
http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/haka-topic32.html
作品を読むと、とてつもない密度の、猿に関する知識が、彼の頭の中に詰め込まれていて、
それが一気に放出されたような感を受けます。
その知識は古今の日本のものにとどまらず中国、インド、西洋、アフリカ、
時代も現代のみならず古代ギリシャ、ローマ、はたまた遠く古代メソポタミアのアッシリアについてまで
及んでおり、
時にはアトランダムに読む者の前に押し溢れて来る感がありますが、
とにかくそのエネルギーたるや驚くべきものがあります。
先に芥川龍之介「猿蟹合戦」において、
明治の新しい世は蟹のような新たな被害者を作り出したというようなことを言いましたが、
同時にその新しい世は、確かに新しい才能を花開かせたのです。
時にはアトランダムに読む者の前に押し溢れて来る感がありますが、
とにかくそのエネルギーたるや驚くべきものがあります。
先に芥川龍之介「猿蟹合戦」において、
明治の新しい世は蟹のような新たな被害者を作り出したというようなことを言いましたが、
同時にその新しい世は、確かに新しい才能を花開かせたのです。
その南方熊楠をもってしても、日本語の「さる」という言葉の由来について、
その語源を辿ることが困難でつき詰め切れなかったということはまことに興味深く。
「さる」という言葉は非常に奥が深いのです(^_^;)
南方熊楠の猿に関する記述は、その広大さゆえ、とても自分にすべて咀嚼しきれるものではありません。
しかし、猿というものについて調べて何かインスピレーションを得ようとす人にとっては、
この作品は宝の山のようにも思えます。
このような作品をお薦めすると、その細かい知識についていけなくて・・・という方がいらっしゃいます。
しかし、これは猿の知識だけを得るために読む作品ではありません。
南方熊楠の計り知れない頭の中を感じる作品なのだと自分は思います。
ぜひ読んで、知の巨人、天下の奇才といわれた南方熊楠の頭の中を感じてみてください。
南方熊楠「十二支考 猴に関する伝説」