らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「猿飛佐助」織田作之助





今月のテーマは「猿」のわけですが、
猿の字のつく歴史上の人物はと問われると、これがなかなか無いんですよね。
猿というのは古来から日本にいる動物のはずなんですけれども、
ちょっと不思議なくらい見当たりません。

猿の字のつく歴史上の人物で、まずもってピンとくるほぼ唯一なのが、猿飛佐助。
戦国武将真田幸村配下の忍者で真田十勇士の一人。
しかし、実在したしないを含め、容貌、年齢、身長など全くの謎。

まるで、謎の覆面レスラーのごときプロフィールなわけですが(笑)
だからこそ自由にキャラを設定できるというメリットもあり、
創作者は自らの想像の翼を羽ばたかせ、
それぞれ自由な猿飛佐助像を作り出しています。

一番メジャーな猿飛佐助は大坂夏の陣で脱出し、
豊臣秀頼真田幸村に供し、薩摩に下るというストーリーだそうですが、
この織田作之助版の猿飛佐助は真田幸村と共に徳川と戦うというシーンは全く出てきません。

なぜか大泥棒石川五右衛門との対決がメインになっています(笑)
しかし、最後に石川五右衛門を倒すわけではありません。


猿飛佐助の青春珍道中記というような内容でしょうか。
戦国の世の死ぬか生きるかの緊張感みたいなものはあまり感じません。
むしろ、自由な世の中をのびのびと闊歩しているという趣があります。
増長した佐助が師匠に術を封じられてしまったり、

石川五右衛門の手下に捕まってガールフレンドに助けられたり、
また、戦国時代なのに、士農工商が出てきたり、

隣は何をする人ぞの芭蕉の句が出てきたりするのは、まあ御愛嬌で許しましょう。
作者も何か非常にリラックスしてのびのび書いているように見受けられます。

作中の猿飛佐助は自らのあばた面を気にしているのですが、
その理由は、忍者として面が割れやすいからとかではなく、
ガールフレンドにあばた面を見せるのがみっともないから(笑)

これだけあっけらかんとした猿飛佐助を読みますと、
今度はネクラで悲愴な猿飛佐助なども読みたくなってきます。
どなたかそういう作品ご存知ありませんでしょうか(^_^;)


おそらく、この作品、漫画がメジャーになる前の、
少年向けの貸本の類いのものであったのかもしれませんね。








最近のアニメで登場する猿飛佐助?だそうです。
ジャニーズ系のイケメンです(^_^;)




最後の最後にちょっとだけ真面目なことを言いますと、
真田家のような小さな勢力の忍者集団がこれだけ有名であることは、
いろいろ理由はあるでしょうが、

真田家がいかに諜報活動を重要視していたということの証左ではないかとも感じます。
そして真田忍者たる猿飛佐助なる者の詳細はほとんど不明というのは、
彼もしくは彼のモデルに当たる人物が忍びとしての任務を

全うしたからこそと見て取れるのではないでしょうか。




「猿飛佐助」織田作之助