らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「猿かに合戦」楠山正雄





2月は「恋」をテーマに色々記事を書いてきましたが、
3月はがらっと変わりまして今年の干支にちなみ、「猿」をテーマにお送りしたいと思います。

猿が登場する昔話といえば、やはり猿蟹合戦。






この猿は、カチカチ山のたぬきと並んで、極悪非道なキャラとして描かれています。
蟹が丹精込めて育てた柿の実を奪い、蟹には青い渋柿しか与えず、
あまつさえ渋柿を蟹に投げつけ、死に致らしめるなど、不埒の悪行三昧。

そして、その後、子蟹による親蟹の敵討ちということになるわけですが、
蜂、うす、栗らの同士を集め、用意周到に満を持して敵討ちする様は、
まるで赤穂浪士のそれを思い起こさせます。

ちなみに蟹の仲間には牛の糞などもおりますが、
ここではその代わりに昆布となっています。
足を滑らすほどのぬるぬるの生昆布なんてかなり新鮮で高級だと思うのですが(^_^;)
海沿いの地方では昆布のバージョンが多いようです。
あと栗に代わり卵というバージョンもあるそうです。
卵が火鉢のそばで温まって爆発するなんてちょっと電子レンジっぽいですが。

とにもかくにも、蟹の一党は、猿の家で待ち伏せという作戦を取るわけですが、
それぞれがそれぞれの特徴を最大限発揮して、
全てのトラップに嵌まった猿はこれでもかというぐらいを追い詰められます。

そして、この物語、最後まさかの衝撃のラスト。



猿は赤い顔をありったけ赤くして苦しがって、
うんうんうなりながら、手足をばたばたやっていました。

そのとき、お庭の隅から子がにがちょろちょろはい出してきて、
「親のかたき、覚えたか!」
と言いながら、はさみをふり上げて、
猿の首をちょきんとはさみではさんでしまいました。





初めて読んだとき、思わず、ええっ!?と言ってしまいました。
まさか猿が蟹のハサミで首をはねられてエンドとは(-_-;)

まさに忠臣蔵討ち入りのごとき本懐を遂げたラストシーンですが、
ちょっとやり過ぎ感があるというか、なんかこうスカッとしない、
なんともいえぬ後味悪さは否めません(-_-;)

確かに猿は悪い奴です。
カチカチ山のたぬきならこれでもいいと思うんですが、
猿の場合は、現代人の自分からすると、
諸手を挙げて、あっぱれという感じでも無いかなぁ(-_-;)
江戸時代ならそうかもしれませんが。

しかしながら、現代でも、やられたらやり返す。倍返し。という考え方もあります。
皆さんはこの結末どうお感じになられたでしょうか。


ちなみに他の人はこの物語をどう思っているのかネットで検索したところ、
小学生の読者感想文の書き方というサイトを発見いたしました。
それには、
「弱点はそれぞれあっても,違いを認めて得意なことを生かせば活躍できると思う」
「自分はバスケットボール部の中で,背が低いのがコンプレックスだった。
でも足が速いので,攻守の切り替えに生かして頑張りたい」
「人との違いを前向きにとらえることが,自分の可能性を伸ばすことにつながる」

うーん、この物語のメインは、蟹が本懐を果たしたことに、それをどう思ったかであって、
蟹一党のチームワークうんぬんがメインではないと思うんです。
やはり、作品というのは、書き手が最も訴えたいことを感じ取ることが大事で、
そうすると、これらの感想は、物語のある部分について、きちんと分析されてはいますが、
やはり本筋を外している感は否めないかなと。
傍論として書くには構いませんけれどもね。




楠山正雄「猿かに合戦」