らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【映画】時をかける少女 細田守監督作品アニメ版

 

 

公式
http://www.kadokawa.co.jp/tokikake/index.php


原作から20年が経った21世紀の現代の世界。 
時を経て女の子はすっかり快活になった、いや、騒がしくなった(笑)
原作の悄々としたおとなしげな少女はどこへ行ってしまったのか。
主人公たちは、男女の仲も、よく言えば、あけすけでフレンドリー、
昔のようにおそるおそる異性に近寄っていくような雰囲気は感じられません。

よくいえば、いろいろな意味でオープンになった現代。
それでは、あの頃の、出会いの思いを心の内に秘めるという世界は、
果たして廃れて無くなってしまったのか。

ひょんなことで、タイムリープできるような高校生の女の子マコト。
原作の和子は、なぜ私にこんな能力が、とおろおろしたのとは対照的で、
さすが物怖じしない現代っ子
時を戻して、学校のテストでいい点を取るわ、カラオケを延長するわ、
お気に入りのプリンを何度も食べるわで、
やりたい放題(笑)

自分のしたことがこの世界にどういう影響を与えてしまうかとかの思考は一切皆無。
至って刹那的なのであります。

ある意味、自分の好きな時にタイムリープして、
時をリセットできるというのは便利だし、
ゲーム世代の現代にかなっていると言えるのかもしれません。

しかし、彼女はある時、気づきます。
今、この時しかないと思って彼女に接している相手の気持ちをリセットして
無かったことにしてしまうことへの後ろめたさ。
この時しかないと、自分に精一杯の思いをぶつけている相手の気持ちを、
タイムリープのテクニックで、いとも簡単に、はぐらかしてしまうことへの疑問。

人間は互いに正面を向き合って精一杯ぶつかり合うことでしか
本当に通じ合うことができない。
それを、斜め向きで、いつでもやり直せる逃げ道を作って臨んでいては、
決して思いは遂げることなどできない。
未来はどうなるのか分からない、やり直すことは二度とできないと思うからこそ、
全力で相手にぶつかっていくことができる。
上手くその場を切り抜けように、なるべく恥をかかないように、損をしないように、
いつでもリセットできるという思いでは何も伝わるものはない。
少女はそのことに気付きます。

Time waits for no one.
時間は不可逆的。時は戻らない。
それは宇宙の摂理であり、人はその摂理の調和の中で生きてゆく。
それはやさしく万物をつつみこむ調和に満ちた時の流れ。
精一杯思いを成し遂げようと真っ正面から向かってゆく者にとって、
時の流れは決して敵ではないのです。

最初、このアニメを見始めた時、
時をかける少女」とは、時を自由自在に操ることができる少女という意味に感じていましたが、
見終わった後、未来に向かって精一杯時を駆け抜けてゆく少女という意味に、
自分の中で知らずに変化していることに気づきました。

一見、悲しい結末にもかかわらず、
作品で描かれている、むくむくとエネルギッシュに湧いてくる入道雲
夏の果てしなく広がる青空のような、
力強く爽やかな印象が残るのはそんなところにあるのかもしれません。