らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】ラ・フォル・ジュルネ バッハ 二台のピアノのための協奏曲集



 
J.S.バッハ:2台のピアノのための協奏曲 第1番 ハ短調 BWV1060
J.S.バッハ:2台のピアノのための協奏曲 第2番 ハ長調 BWV1061
J.S.バッハ:2台のピアノのための協奏曲 第3番 ハ短調 BWV1062

イド・バル=シャイ (ピアノ)
ルイス=フェルナンド・ペレス (ピアノ)
児玉桃 (ピアノ)
オーヴェルニュ室内管弦楽団
ロベルト・フォレス・ヴェセス (指揮)


今回、ゴールデンウィークの演奏会で聴いた
バッハの2台のピアノのための協奏曲。

実は、これらの曲には、ちょっと思い出があります。

あれは高校生のとき。
自分の高校は公立だったのですが、
そこにはめずらしく普通科のほかに音楽科という特別のクラスがありました。
ほとんど女の子ばかりで、普段まじわりもなかったのですが、
体育祭の際、同じチームになって競技したことから交流ができて、
その打ち上げの場などで、ちょっと仲良くなったことがあります。

今となっては、詳しくはよく覚えていないのですが、
それから、しばらく経った日のこと、
学校帰りにたまたま一緒になった音楽科の女の子がいて、
レコード店にCDを買いに行くから、つきあってくれないかという話になりました。

自分は用事もないし、まあいいかというくらいの軽い気持ちでOKしたのですが、
その時、レコード屋さんで、彼女が手にとって、
この曲すごくいいよと自分に勧めてくれたのが、この曲のCDだったのです。

当時自分はクラッシック音楽にはほとんど興味がなかったので、
1枚ぐらい買ってみてもいいかという程度だったのですが 、
2、3日して彼女がやってきて、
あのCD聴いてみた?どうだった?と話しかけてきました。
何々の曲の最初の出だし、すごく綺麗でしょ。
というように、あれやこれやと一生懸命いろいろ説明してくれたのですが、
当時、聴いてはみたものの、
正直ピンとくるところがなく、なんとなく生返事で終わってしまった記憶があります。

そして、自分がひょんなきっかけで、クラシック音楽に興味を持ったのは、
それから数年後 、上京して、大学生になってからのことです。
その時、たまたま手元にあったそのCDを高校以来久々に聴いてみると、
チェンバロの調べが、非常に美しく、変化自在に音色が跳ね回っている感じで、
この演奏が、自分の、バッハにハマるきっかけになった一枚であったと言ってもよいと思います。

それからというもの、そのCDをたまに引っ張り出しては愛聴し、
今年、20年を経て、その曲の生の演奏を初めて聴きに行ったというのは、
ちょっと感無量なところがあります。

長い月日が経ってしまい、今となっては、その子の面影も霞がかかったような感じなのですが、
その時のバッハの作品に対する彼女の熱の入った語りは、今も記憶に残っています。
彼女は自分に対して好意をいだいてくれて、素直な心で、素晴らしいものを勧めてくれた。
だからその想いが、自分の心の奥底に達し、月日を経た今も残っている。

それに比べ、当時の自分には、実は、他に仲のいい同級生の女の子がいて、
何気に、つっけんどんな態度をとってしまい、
彼女の心を必要以上にブロックしてしまっていたような気もします。

もし、今、彼女と会うことがあったら、
あの時、〇〇さんが勧めてくれて買ったCD、 今も聴いてるよ。
この前のゴールデンウィークに、その曲の演奏会に初めて行ったんですよ。
というようなおしゃべりをしてみたい気持ちにかられます。
 
残念ながら、かなわないことですけれども。


今回の演奏を聴いてみると、二台のピアノの音色は、
春の野をひらひらと飛ぶ二匹の蝶のよう。
ある時は二匹並んで、ある時は一匹が一匹を追いかけるように、
ある時はそれぞれが自由に宙を飛び回る。

その様子にじっと耳を傾けていると、
その小気味良さと心地よさに、なんともいい気持ちになります。