らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「こよみと時計」金子みすゞ



 
 
こよみがあるから
こよみをわすれて
こよみをながめちゃ、
四月だというよ。

こよみがなくても
こよみを知ってて
りこうな花は
四月にさくよ。

時計があるから
時計をわすれて
時計をながめちゃ、
四時だというよ。

時計はなくとも
時計を知ってて
りこうなとりは
四時にはなくよ。





金子みすゞさんの世界を一言で説明するのは難しいのですが、
あえて説明しようとするならば、
大人になって忘れてしまっていた、
子供の目から見えた世界がそこに広がっている。
といったらよいでしょうか。

彼女に見えるその世界は、
そそと足早に流れ行くことなく、
すべてのものがはっきりと、そのかたちをあらわにしながら
ゆっくりと流れてゆく、
みずみずしい好奇心と不思議に満ちた世界です。

そして、それは、社会のしがらみや因習といったものに縛られている大人には、
決して気付くことのない、
初々しい感性に満ちています。

また、それは、誰もが発見しえなかったものを初めて見出したというよりは、
幼い頃、誰もが一度は見つけて感じていたのに、
いつしか埋もれてしまっていたものを
もう一度捜し出して見つけてくれたような、
ある種、なつかしさのようなものをよみがえらせてくれるものです。

金子みすゞさんの素晴らしさは

そういうところにあるのではないかと、
自分は思っています。