らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「雨の日には雨の中を」相田みつを



 

 


 

気高くそびえている聖人や偉人の言葉は、確かに素晴らしいと思います。
しかし、悪い意味で、近寄りがたい気高さもあります。 
それにくらべると、あいだみつをさんの書は、
身近にいるおじさんが、親しみをこめて励ましてくれるような暖かみがあります。

まず、そのぶきっちょともいえるような独特の言葉。
読むうちに、あいださんにしか醸し出すことができない、
なんともいえない、温かな、ふわっと、つつまれるような、そんなものを感じます。

書というのは、絵画に通ずるところがある東洋独特の素晴らしい芸術だと思います。
文字はある種、コミュニケーションのための記号ですから、
無個性のもののようにも思われがちですが、
それが、それぞれの書家の筆にかかるや、同じ文字でも書く者によって変幻自在、
その者の思いそれぞれに、その感じられたものが形となって羽ばたいてゆきます。

あいださんの書は、必ずしもスマートではないかもしれませんが、
無骨ながら踊るような独特のリズム感が感じられます。
ある時は文字が大きかったり小さかったり、
ある時は墨をたっぷりつけた堂々としたもの、
ある時は勢い余ってかすれてしまったり、ひょろひょろっとよれてしまったり。

つまりは、あいださんの書というのは、今、まさに生きている人間の、
ひとつひとつの鼓動のようなもの、生の呼吸のようなものが描かれている。
そのように感じます。

自己が悩み悩み右往左往しながらたどりついたものを、
ぽつりぽつりと、ひとつひとつの言葉を、
迷いながら、確かめながら、そして、かみしめながら書く。
そんなところが、あいださんの作品を見る我々に、
温かい、寄り添うような何かを感じさせてくれるような気がします。

あいださんの作品は、自分自身生きていくうえで、ひとつひとつ感じ取った、
それは決して観念的でなく、他人から借りてきた写したものでもない、
その時その時の、あいださんの呼吸、生きている感触のようなもの。
ですから、同じ言葉を書いた作品でも、それぞれにそれぞれの味がある。

同じ題材の作品を何枚も描いた、モネの「つみわら」、ゴッホの「ひまわり」のように。
 
 
 







 
 


なお、先日、あいだみつをさんについて、わかりやすく解説した美術番組が放映されました。
今度の日曜に再放送もあるようですので、
興味をもたれた方は、ぜひご覧になってみてください。
 
 





書家として無名で作品が全く売れなかった頃、
自ら売り込みに行ってデザインし、生活費を得た和菓子屋の包み紙。
今でもこの和菓子屋では、この包み紙が使われているそうです。