らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【閑話休題】台風18号と千家国麿さんの結婚式



先週日曜、高円宮典子様と千家国麿さんの結婚式が、
出雲大社の拝殿で執り行われました。

お二人の御結婚につきましては、
以前少々記事にしたことがあります(^_^;)
http://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/12969724.html

折しも、やや季節外れの大型台風18号が日本列島に接近中で、
どのニュースも台風が接近するあいにくの空模様の中…
などというニュアンスで伝えていましたが、
自分はちょっと違う印象で、このニュースを見ておりました。

前にも申し上げましたが、
出雲大社権宮司である千家国麿さんは、
素戔嗚尊スサノオノミコト)から数えて85代に連なる由緒ある家系とのこと。
素戔嗚尊とは古事記にも登場する最も重要な神の一人ですが、
何の神かというと、荒ぶる海の神。
時には暴力的ですらある荒ぶる海の力といいますと、
やはり、ピンとくるのは暴風雨を伴う台風です。

変なことを言うようですが、
今回のやや季節外れの台風は、素戔嗚尊が自らの末裔の婚礼を、
わざわざのぞきに出向いて来たのではないかと
ふと思ったのでした。

今回の台風18号の進路を見ますと、
日本列島に接近するぎりぎりまで、伊勢湾台風並みの超弩級の勢力を保ち、
人々をヒヤヒヤさせながら、
そのまま日本列島直撃するのかと思いきや、
その直前で90度に大きく右カーブ。
四国から近畿、東海、関東とその沿岸沿いをなめるようにゆっくり進み、
その威容を人々に存分に見せつけながら、
悠々と太平洋に抜けてゆきました。

圧倒的な自己の存在感を人々に見せつけるその様は、
まさに古事記に記されている素戔嗚尊的性格そのものです。

おそらく日本の人々は、太古の昔から、南の海から突如として現れ、
問答無用に暴れまわって、
あっという間に去ってゆく台風を、
神として畏れ、崇め、敬いながら生きてきたのでしょう。

ところが昨今、台風の正体は、南方の温かい海水と空気が引き起こす
熱帯低気圧の発達したものであると科学的に解明され、
神々の為す仕業だと考える人はほとんどいなくなりました。
と同時に、それに対する畏れというものも希薄になり、
忌み畏れるというよりは、
むしろ、その正体を見極めてやろうという
好奇心旺盛な人々が昨今増えたように思います。

そのように畏れなく人間が生きてゆくことは、
必ずしも好ましいことばかりではないのではないかと思うところが、
実は自分にはあります。

自分は、好奇心旺盛な合理的思考を否定するものでなく、
むしろそれを積極的に推奨する人間ですし、
ここで迷信深い魑魅魍魎の世界に戻るべき
ということを言っているわけでもありません。


畏れとは、すなわち自己への戒めであり、
畏れなき人間は戒めなきゆえに、
思いがけない災厄を被ることがある。
それを思うのです。

畏れを抱く存在があるということは、
必ずしも人間にとって悪いことではない。
そう感じるところが自分にはあります。


今回の台風18号、
週明け月曜の午前中に首都圏を直撃し、
一時は道向かいのビルが見えなくなるほどの
激しい雨が降り続きましたが、
台風が去るや一転、今まで幾重にも閉じられていた帳(とばり)が次々と開くように、
みるみる厚い雲が引き払われ、
全ての雲が引き払われた瞬間、
きれいに洗い流されたすきとおった空気の彼方に
くっきりとそびえる黒い富士の姿が見えた時、
オフィスの人々から思わず、
おおっという感嘆の声が上がりました。

その時感じたのは紛れもない
目に見えぬものに対する畏敬の念であり、
それは科学的に全て解明されたからゼロになる、無かったことになるという
択一関係ものではなく、
依然として厳に存在し、併存するものではないかと思うのです。
 
 
 
 
 八頭蛇を退治する素戔嗚尊