らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【美術】エヴァンゲリオン展


 



 
自分が「新世紀エヴァンゲリオン」を初めて見たのは、
社会人になって間もなくの頃、
仕事から帰って、夜遅くテレビをつけたら、
たまたま放送していたんです。たぶん再放送。

最初、近未来のロボットもの?
襲来する敵を毎回倒し世界を守る?
というような話かなと思いましたが、
まあ大きく外れてはいないのですが、微妙に違う。
この微妙な違いが実はエヴァンゲリオンの大きな特徴のようです。
正確にはエヴァンゲリオンはロボットではなく、汎用人型決戦兵器というシロモノだそうです。

主人公のシンジくんは正義を守る熱血漢でもなく、
今ひとつやる気がありません。
そもそも、シンジくんという名前自体がそうじゃないですか。
昔のロボットものなどは、主人公の名前が波乱万丈というような
やる気満々なパワフルな名前でした(波乱が姓で名前が万丈です)。

しかし、シンジ君にはどこかやらされ感がある。
そして対峙する敵も今ひとつその目的がわからない。
敵のなんとか大魔王が人類抹殺を高らかに宣言するわけでもなく、
積極的に攻撃せずに、ぬぼっと、つっ立っているだけのものもいます。
もちろん凄いやつもいますが。

物語上、敵は「使徒」と呼ばれています。
ピンと来た方もいらっしゃると思いますが、
エヴァンゲリオンはいろいろなネーミングを聖書の神秘学のようなものから採用しています。
エヴァンゲリオンという名前自体、人類最初の女性エヴァからきていますし、
アダムというネーミングのものも出てきますし、ロンギヌスの槍などというものもあります。
使徒はオカルトティックな不思議な形象をしており、
デザイン的にもなかなか魅力的です。
http://matome.naver.jp/odai/2135348807467922301

シンジ君は、大人が、敵だから倒せと言うから仕方なくそれらと戦います。
そして、いつも何かモヤモヤしている。
このシンジ君、14歳で、思春期真っ只中の少年です。
世界を守るためなら、もうちょっと軍事的に鍛えられた大人の方がいいんじゃないの?
と誰もが思いますが、
超兵器エヴァンゲリオンは、心がエヴァンゲリオンとシンクロする者にしか操縦できないということなんです。
上手いことギミックを考えたと思います。

物語では、2人のタイプの異なる女の子が出てきます。
14歳の男の子の、女の子に対する思いは非常に微妙なものがあります。
自分は大人だと意識し、快活で、あけすけにずけずけと物を言う女の子は基本苦手です。
できればあまり関わり合いたくないと思っています。
もう1人のおとなしくて何を考えているかわからないタイプの女の子。
こちらの方が安心できます。
自分の心をつつかれることもありませんし、自分の想像の中に彼女を置いておくこともできます。
要は彼女と接することで、自分が傷つくことがないんです。

シンジ君、最初は、イヤイヤ戦ってはいましたが、
戦っているうちに、自負心や仲間との信頼感のようなものが芽生えてきて、
次第に頼もしくなっていきます。
しかし時には弱気の引っ込み思案に戻ることもあり、
飛び出したり、引っ込んだり、見ている方は少々イライラするかもしれません。

もうおわかりかもしれませんが、
エヴァンゲリオンとは壮大な思春期の少年の心の形象を描いた作品のように思います。
何が何だかわからないうちに大人に何かをやらされている感、
自分が傷つくのが怖くておどおどしているも、
ある時、表に一歩を踏み出して新しい世界を知りたいと思う瞬間もある。
しかし、一歩進むにも、わからないことだらけで、先が見えない手探り状態、心は不安で仕方がない。
劇中で出てくるATフィールドやらマギ計画やらわけのわからない術語は、
思春期の少年のそういう消化しきれない心情を象徴しているように感じます。

時にはやみくもに突っ込んでいって、はね返されたり、突き破ったりの繰り返し。
思春期とはそういう時代です。
そしてある時、今までのどんよりとした厚い雲がどこへ行ってしまったのかと思うほど、
ウソのように広々とした青空が目の前に広がる瞬間があります。

自分の見た最初のテレビシリーズでは、シンジ君はそこまでには至っていません。
ただその続編が作られており、自分はそれを見ていないので、
シンジ君のその後を知らないのです。


さて、横浜そごうで開催されているエヴァンゲリオン展。





たくさんの原画が展示されていましたが、
意外とアニメチックではなく、
人間としての骨格や細かい筋肉の動きや表情といったものが実に細かく書き加えられていました。
アニメ画になるとその細かいラインは消えてしまうわけですが、
骨格は見えずとも人間の形をしっかりと支えているのと同じで、
消えてしまった細かいラインというのは、
魅力的なキャラの豊かな表情と動きを支えているわけです。
非常に基礎がしっかりした骨太な絵で感心しました。
(参考)http://www.evastore.jp/pc/genga.html
 

 

なお、大ヒットするアニメには、
必ず流行る名ゼリフみたいなものがあります。

シンジ君の、戦いの最中の
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」
は会社でよく使います(笑)

ちなみにエヴァンゲリオンの設定された世界は来年2015年だそうです。
来年、世の中の14歳の男の子は、
間違いなく悶々とした思春期の真っ只中にあることでしょう。
そういう意味ではエヴァンゲリオンの世界は近未来を的確に予知しているといえますね(^_^;)




ファンの方が楽しそうにポーズをとっていらっしゃいますね。