らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【閑話休題】ソチオリンピック雑感「男子フィギュアスケート」

 

 


 
祝 羽生結弦選手金メダル


ドキドキしながら見ていました。
最初の4回転ジャンプで大きく転倒した時には、
思わず伊藤みどり選手のアルベールビルトリプルアクセルの失敗の姿と重なりました。

その時祈るような気持ちで、
どうか伊藤みどりさんのあの時のような滑りをしてくれと念じていました。

が、彼は、いい意味でいえば、慎重に丁寧に滑りましたが、
悪い意味でいえば、伊藤みどりさんほど開き直って
思い切り行けなかったように感じます。

十代とはいえ、世界のトップアスリートですから、
それはごく僅かな心の揺らぎであったことでしょう。
しかし、この場で自分の全てを出し尽くそうというよりは、
もうミスは絶対許されないという、
ある意味、恐怖にも似た心持ちが僅かに勝って、
果敢にチャレンジするというスピリッツが、ごく僅かですが、
揺らいでいたようにも見受けられました。

しかし、後半の持ち直しはさすがで、
なにげない滑りに見えても、そこには細かい技術と工夫が詰め込まれていており、
彼のスケーティングは見ていて飽きるところがありません。

そして彼はスラッと背が高く、手足がとても長く、
その舞いは非常に優美ですね。
そういった意味では、クラシックバレエの道でも大成できた人であると思います。

ご存知の通り、フィギュアスケートは、古典的バレエの優美さと
ジャンプなどのダイナミックなアスリートとしての両面の魅力を兼ね備えた競技です。
彼はどちらかというと本来的には、前者に軸足を置く選手なのでしょう。

自分は、今回のオリンピックで彼が獲得したのは、
ある意味、未完成の金メダルだと感じます。
つまり彼は金メダリストという名を先にもらった。
その実(じつ)を必ずしも満たしていないと、彼自身一番感じているような気がします。

この世には金メダルを取れない苦しみもありますが、
金メダルを取ったことによる苦しみもあるのだと思います。

ですから、ぜひ今回の金メダルの実(じつ)を絶え間ない努力で、
今後ぜひ勝ち取ってほしい。

古典的バレエの優美さとアスリートとしてのダイナミックさの両方を
最高にまで極めた演技を今後完成できるのは
彼しかいないと思っています。
自分はファンのひとりとして心から応援しています。

 
 



 
讃 エフゲニー・プルシェンコ選手(ロシア)


ロシアが生んだ偉大なフィギュアスケーター
金メダル獲得オリンピック個人1回、世界選手権3回、欧州選手権6回。
優美なバレエとしてのスケーティングの芸術性もさることながら、
アスリートとしてのフィギュアスケートの価値を重視し、自らも四回転ジャンプをあやつる
羽生結弦選手や浅田真央選手が尊敬するスケーターとして
真っ先に名を挙げる「皇帝」の異名をとる偉大な選手。

今回は団体で金メダルを獲得するも、個人では持病の腰痛が悪化し棄権。

しかし今回は彼を悲劇の帝王として取り上げたのではありません。
今回彼がソチの舞台に立っただけで、
今回及び今後のフィギュアスケート界に大きな影響を及ぼしたともいえます。

先のバンクーバーオリンピックで物議をかもした、いわゆる四回転発言。
詳細についてはこちらの該当部分を参照していただきたいのですが、
http://fpu.nobody.jp/saiten2.html
アイスダンスに近いスケーティングの優美さを重視するのか、
アスリートとしてのスポーツ性を重視し、ジャンプなどに得点をより積極的に加算するのか。
伊藤みどりさんがアルベールビルオリンピックでトリプルアクセルを跳んで以来、20年、
フィギュアスケート界はずっとその問題に揺れてきたともいえます。

しかし今回のオリンピックは、プルシェンコの祖国ロシアで開催されたものであり、
そして激しく抗議した大物の彼自身が出場したことから
今回男子においては事実上四回転ジャンプを入れるプログラムが要求されました。
上位者は全て積極的に四回転ジャンプを取り入れた者であり、
いわゆるアスリートとしての面を重視したものとなりました。
転倒者が多かったのもそういう面も影響しているのではないかと思われます。

フィギュアスケートにおいてどちらの側面を重視するかということについては
それぞれ両論あり、非常に難しい判断も含みますが、
自分は伊藤みどり選手、浅田真央選手、プルシェンコ選手が果敢に挑んだ
アスリートとしてのフィギュアスケートの側面をより重視していくべきとの立場をとるものです。

その詳細については次回の記事「女子フィギュアスケート」において
つまびらかにしたいと思っています。

最後にプルシェンコ選手のちょっと面白いスケーティングプログラムをお見せします。
スピーディーで力強く、キレがあり安定感がスゴい。
ある意味、繊細な羽生君が吹っ飛んでしまうような野太さがあります(^_^;)