らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【閑話休題】ソチオリンピック雑感 前編

 

 

フリースタイルスキーモーグル女子」


上村愛子選手4位入賞ご苦労様でした。



デビューの長野オリンピックの時には18歳でアイドル的存在だった
上村愛子さんも、すでに出場5回目で34歳。

なかなかメダルまで届かない彼女が、これが最後と臨んだ今回のオリンピック。

実をいうと、今までの彼女の滑りは、自分はあまり好きではありませんでした。
整っていて、これといったアラはないんだけど、どこか物足りない滑り。
メダルを取る人のパフォーマンスというのは野性味あふれるというか、
ガッと直(じか)に心を鷲掴みにするような迫力があるんです。
そういう意味では、既に引退した里谷多英選手の滑りの方が思い切りがよくて好きでした。
上村愛子選手の滑りは、悪い意味で品がいいんです。

しかし今回は少々違いました。
最初のヘリコプターの跳躍が終わってからの、コブの攻めの滑りは、
まさに自分のギリギリの限界を常に少し上回りながら
それを素晴らしい気力と集中力でカバーしてクリアしてゆくような、
まさに彼女の持てる全力以上のものを出した滑りに感じました。

コブに大きくスキー板がとられると思った瞬間、
自分の身にグッと板を引き寄せる強靭な力が、一体彼女のどこにひそんでいるのでしょう。

滑り終わった後、順位を見るまでもなく涙が溢れたって気持ちわかります。
清々しいという気持ちもわかります。
まさに自己の持てるもの以上のものを
最高にして最後の舞台で完全に出し切ることができたんですから。

自分は決してかわいそうだからという情(なさけ)で、
物事を判断する人間ではありません。
しかし、今回の上村愛子さんの滑りは
今回のオリンピックのベストバウトのひとつに自分は挙げたいと思います。
誰が何と言ってもです。

上村愛子さんも34歳ですか。
女性の方ならわかるでしょうが、
三十代半ばというのは女性の体力がガクンと落ちる年代です。
どんな優れたアスリートでも、年齢による衰えの限界からは逃れられません。
その穏やかな性格は指導者として
多くの人々を集めることができることと思います。
どうか御自身が引退しても
何らかの形でスキー競技に関わっていただきたいと
心から願っています。



「ジャンプ男子ラージヒル


讃 葛西紀明選手銀メダル



2本目の助走の時は、見ている自分もかなりドキドキしていましたが、
飛んだ瞬間それは全くの杞憂だと感じました。

なんとゆったりとした安定感のある跳躍。
体のみならず両手の指も5本全て目一杯に広げ、
まさに全身で風を受けソチの大空を舞う。
そのまま大きく翼を広げながら、ゆっくりと地に下りる大鷲のような
堂々とした王者のごとき舞い降り。
美しいの一言に尽きます。

長野オリンピックの男子団体は金メダルこそ取りましたが、
この葛西選手の堂々とした舞い降りに比べると
少々余裕がないようにも感じます。
当然風とか気候の差はあり、その影響があるとしてもです。

自分は、長野オリンピックを超えるジャンプ競技での感動は
もう有り得ないと思っていましたが、ここにありました。
葛西選手どうもありがとうございます。

ジャンプ前、解説者が7度目の挑戦と言っていました。
勝利するまで諦めない執念と情熱。
そして勝利するまで持ちこたえた御先祖からもらった強靭な肉体と
それを丁寧にメンテしてきた本人の努力。
勝利を決して焦ることのない、ゆったりとした弛ゆかな心の流れ。

大器晩成の条件が葛西選手の中には全てありましたね。