らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「雪景」山村暮鳥

 
 
山はぷりずむ
山山山
山上さらにまた山
雪のとんがり
きららかに天をめがけ
山と山とは相対して
自らのひかりにくづれつ
雪の山山
きらりもゆる雪山
山山のあいだに於いて
折れたる光線
せんまんの山を反射す
 


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もうすっかり冬ですね。
首都圏ではまだですが、関西の方ではもう早々と初雪の便りも聞かれたようです。
首都圏から見える富士山も、かなり雪が積もっているのが一望できます。

ところで、皆さんは冬山に登られたことがあるでしょうか。
実は自分は、高校の時に山岳部に所属して以来、
少々、山と縁がありまして何度か登ったことがあります。

頂(いただき)から見えるその雄大なパノラマは、
連なる山々が真っ白に輝き、
そこから放たれる、まばゆいばかりの光が、
真っ青な冬の空に向かって反射しており、
下界では決して感じることのできない、
言葉では語り尽くし難い
素晴らしい光の世界がそこにあります。

この作品はその光の情景を、見事に言葉に表現したものといえます。

言葉とはこんなにも変幻自在で、
こんなに豊かに表現することができるものなのかと、
言葉のもつ奥深さと詩人の鋭い感性に深く感じ入る作品となっています。

真っ白な雪をかぶった冬山が、陽の光に反射する様子をぷりずむと表現しています。
プリズムではなく、ぷりずむとしたのは、
その光が、機械的科学的でない、
しかし、まばゆい一直線の光を放っている様子が感じられます。
そして山という言葉を幾重にも重ね合わせることで、
果てしなく続く連山の山々の壮大な白い情景が広がってゆきます。
その幾重もの雪におおわれた山々がプリズムのごとく
天からふりそそぐ光を反射して、
まばゆいばかりの光の世界を造り出している。

非常に色彩的であり、絵画的であり、
ある意味、冬山を描いたどの絵画よりも、
遠くの山々の光の鮮やかさまで感じ取れる、
雪の冬山の素晴らしさを表現し尽くした作品となっています。

美しく、雄大で、どこか幾何学的でもあり、
そして光るように白く清々しい、
冬山の魅力をギュッと凝縮して、言葉の中に閉じ込め、
そして解き放っている。

詩人として、言葉のもつ可能性といったものを知り尽くしたその習熟ぶりと、
その言葉を作品の中にそっと置くことができる繊細な感性に驚かされる作品です。
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